https://www.bbc.com/japanese/46435895

燃料税めぐる抗議行動で80歳女性死亡 仏南部マルセイユ
2018年12月4日

仏南部マルセイユで1日に起きた燃料税をめぐる抗議行動で、80歳の女性が催涙ガス弾に当たり死亡していたと現地メディアが報じた。

抗議行動の発生場所近くにあるアパート在住のこの女性は、窓のシャッターを閉じようとしていたところ、催涙ガス弾が顔に当たった。

現地メディアによると、女性は病院に運ばれたものの、手術中に死亡した。死因はショック死だったという。
2週間以上前にデモが始まって以降、抗議行動をめぐって3人が死亡したと仏警察は2日に発表している。

クリストフ・カスタネール仏内相は、「ジレ・ジョーヌ」(フランス語でイエロー・ベスト、黄色いチョッキの意味)として知られる運動に対する広い支援を示すため、仏全土で約13万6000人が抗議行動に参加したと発表した。

フランスでは、全車両が視認性の高い蛍光黄色の服を搭載するよう法律で義務付けられている。この黄色のベストを着た人たちが道路で抗議をしているため、抗議行動は「ジレ・ジョーヌ」と呼ばれる。抗議者は、ディーゼル燃料に対する税金の急速な増加に不満を示している。

ただし、燃料税の増税をめぐり始まった抗議行動は、生活費全般の高騰への怒りとなって膨れ上がっている。

パリのアンヌ・イダルゴ市長は仏メディアに対し、1日の抗議行動は300万ユーロから400万ユーロ(約3億8600万円から約5億1500万円)相当の損害を生んだとの推計を明らかにした。
「ジレ・ジョーヌ」運動の一部代表者は4日にエドゥアール・フィリップ仏首相と会談する予定だったが、運動側が会談を中止した。

パリで取材するヒュー・スコフィールドBBC特派員によると、会談に向けて準備していた運動の穏健派メンバーが、過激派メンバーから非難されたため、会談を中止した。穏健派は殺害脅迫も受けているという。

「ジレ・ジョーヌ」運動の広報担当者、クリストフ・シャランソン氏は3日、政府に退陣を求めた。シャランソン氏は仏政府が、「(元仏軍トップのピエール・)ド・ヴィリエ将軍のような真の司令官」に置き換えられるべきだとした。
ド・ヴィリエ将軍は元仏軍統合参謀総長で、国防予算の削減をめぐりエマニュエル・マクロン仏大統領と衝突して辞任した。

中略

<解説>1968年以来最悪の抗議行動、仏メディアに衝撃――BBCモニタリング

「ジレ・ジョーヌ」の抗議行動がパリ市街で暴動を起こし、自動車を燃やし、商店で略奪行為を働いたことで、仏主要メディアに衝撃と怒りが走っている。

左派寄りの論調で知られる仏日刊紙リベラシオンは、「1968年5月に起きた出来事(5月革命)以来、最も暴力的な集会を、パリは間違いなく経験している」と書いた。抗議行動の参加者が、国家主義者や極右の学生団体から極左の民兵や無政府主義者まで多岐にわたっている「不均一性」も同紙は指摘している。

中道右派の日刊紙ル・フィガロは「国家的危機」とタイトルのついた社説で、12月1日が「国家が共有する傷であり続けるだろう」と書いた。ル・フィガロは「許し難い暴力の爆発に直面し」、国全体が「国家の崩壊を目撃している感覚を抱いた」としている。

日刊経済紙レ・ゼコーは一面見出しで、エマニュエル・マクロン仏大統領が「大混乱に対峙している」と書いた。
レ・ゼコーは「1日の暴力的光景を受け、仏大統領府は未だに、強い政治的返答を模索している」と伝えた。

中道左派の日刊紙ル・モンドは「大きな政治的危機」と伝え、アルゼンチンから帰国したマクロン大統領はすぐ、「暴力の現場」となったパリ中心部の凱旋門(がいせんもん)に向かったと書いた。

(英語記事 France fuel protests: 80-year-old woman killed in Marseille)