>>733
小笠原丸事件も酷いな
https://www.bookbang.jp/review/article/30374
 日本はポツダム宣言を受諾し、日本軍は無条件降伏している。それにもかかわらず、ソ連は、小笠原丸を無警告攻撃し、
沈めた。国際法に明白に違反する蛮行だ。

〈海上に、動くものがあった。浮んでいる行李が、回転している。一人の老人がその上に這い上ろうとする度に、行李が
まわっている。やがてその動きがとまると、老人の姿も消えた。

 かれ(引用者註*大崎邦雄氏)は、死の予感におそわれた。冷たい海水につかっている体は、激しく痙攣している。
タラップをつかむ手も感覚を失って、今にも手をはなしそうであった。戦時をようやく生きぬいてきたのに、このような死に
方をするのはいやだ、と思った。

 その時、かれの眼に異様な光景が映った。ほの暗い海上に、強い光を放ったものが何条も飛んでいる。それはあきらかに
曳光弾で、浮上した潜水艦が海面を機銃掃射していた。かれは、潜水艦の執拗さに慄然とした。戦争は終っているというのに、
潜水艦は灯火をともして航行している「小笠原丸」を撃沈し、さらに、辛うじて死をまぬがれ漂流している者に、機銃弾を
浴びせかけている。〉

なぜ、ソ連はここまで執拗に日本人を憎んだのだろうか。ロシアを専門とする外交官として7年8カ月モスクワに勤務したことを含め、
ロシア人と30年近く付き合っている私には、それを解く鍵が、東京湾に停泊する米戦艦ミズーリ号の上で日本が降伏文書に署名した
1945年9月2日に行ったスターリンのラジオ演説にあることが、皮膚感覚でわかる。
日露戦争の復讐をソ連軍は、無辜の日本人に対して行ったのである。北方領土の占拠、シベリア抑留とともに小笠原丸を含む引揚船に
対する攻撃は、いずれもスターリン主義が引き起こしたものだ。