味以上に収穫量を重視する「多収米」が、静かに広がっている。減反が終わった今年、多くの産地が高級なブランド米に生き残りをかける中、安さをアピールする「逆張り」の作戦だ。

 コメどころ、新潟県北部に位置する村上市の蒲萄(ぶどう)集落は10月下旬、実りの秋を迎えていた。棚田を彩る稲の茎は太く、心なしか垂れる穂も重そう。コシヒカリより粒が一回り大きく、重さは3割増しの品種「大粒ダイヤ」だ。

 約50ヘクタールで稲作を手がけるコメ生産会社社長の貝沼純さん(43)も以前は、コシヒカリを中心にしていた。3年前から大粒ダイヤを作り始めると、飲食店やコメ卸会社からの注文が急増した。売値はコシヒカリより2割安いが、一つの穂から取れる量が多いため、全体の稼ぎは増えた。病気や台風にも強く、少ない人手で効率よく作れるという。

 安さ以外のセールスポイントもある。粘りと甘さが特徴のコシヒカリに対し、大粒ダイヤは粒がしっかりしていてあっさりした味わい。昨年から大粒ダイヤを使い始めた東京・銀座の天ぷら店「一宝」の関勝さん(52)は「天つゆを吸ってもべたつかない、求めていたコメだ」と話す。

 「作り手にも買い手にもうれしい。未来の新潟のコメ作りを支えるのはコシヒカリではなくなる」と言い切る貝沼さんの会社は今、「ちほみのり」なども含め、多収米が全体の6割を占める。

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朝日新聞デジタル
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