猪目洞窟遺跡から出土した下あごの骨を借り受ける研究者=出雲弥生の森博物館提供
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 ◇東京いずもふるさと会

 ◇猪目洞窟などDNA解析

 ◇ネットで資金 来冬発表へ

 出雲市など県内の遺跡から出土した人骨から自分たちのルーツを探ろうと、関東在住の出雲市出身者でつくる「東京いずもふるさと会」(事務局・東京都港区)の依頼した調査が本格的に始まった。4日には研究者らが同市内の博物館などで人骨の一部を採取。今後1年かけて、DNA解析などで「出雲人」の由来に迫る。(平野真由)

 同会には、以前から「自身のDNAを調べれば出雲人のルーツを解明できるのではないか」と調査を求める声があった。

 祖父母の代から出雲市在住だった人を「出雲人」と定義し、2010年から岡垣克則会長(77)ら会員と出雲市の住民の計約40人の血液や唾液の採取を開始。国立遺伝学研究所(静岡県)の斎藤成也教授がDNA解析を行い、地理的に近い朝鮮半島より、東北地方の住民に近い可能性があることが分かった。

 「古代の出雲人を調べたら、さらに日本人のルーツに迫れるのでは」と岡垣会長らは、猪目洞窟遺跡(出雲市)から出土した人骨のDNAを調べようと思い立ち、斎藤教授に再び依頼。今年、古代出雲人人骨解析プロジェクトを発足させ、ネット上で資金調達する「クラウドファンディング」で活動費219万1000円を集めた。

 斎藤教授と国立科学博物館(東京都)の神沢秀明研究員は4日、松江市の県埋蔵文化財調査センターで小浜洞窟遺跡(松江市美保関町)から出土した縄文時代後期の人間の歯を採取。出雲市の出雲弥生の森博物館では、猪目洞窟遺跡の古墳時代とみられる層から出土した頭蓋骨の一部や、歯の付いたあごの骨などの提供を受けた。今後1年かけて年代分析やDNA解析を行い、来年12月に発表する予定という。

 斎藤教授は「遺伝学的に裏付けを取れば、古代の出雲の人がどこからやって来たのかがはっきりする可能性がある」と話し、「由来がわかれば、古事記などにある神話の世界が史実である証明につながるかもしれない」と期待する。

 岡垣会長は「寄付が集まり、ルーツを知りたい人が全国にたくさんいることがわかった。神話が歴史になるかもしれない、というロマンを感じてくれたのではないか」と喜ぶ。

 同博物館が、遺跡の人骨をDNA解析のために提供したのは初めてで、学芸係の石橋紘二さん(40)は「猪目洞窟は70年前に発見されてから、まだまだ不明な部分の多い遺跡なので、新発見を楽しみにしている」と話している。

読売新聞 2018年12月09日
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