県は2019年度、ともに県水産試験場(安曇野市)が開発したブランド魚の「信州サーモン」と「信州大王イワナ」の稚魚の供給を増やす。成魚の出荷量が県内外の高級料理店や宿泊施設向けに伸びており、増産を望む県内養殖業者の声に応える。稚魚を生産する同試験場本場(同)と木曽試験地(木曽郡木曽町)のそれぞれに、増産に必要な設備を新設。19年度の稚魚の供給量は前年度比で信州サーモンが9・3%、信州大王イワナが18・6%増える。

 県園芸畜産課によると、信州サーモンは近年「知名度、人気がともに上がり、品薄状態が続いている」。05年に成魚の出荷が本格的に始まり、17年度は395トンを出荷。信州大王イワナの成魚は16年に出荷が始まり「少しずつ知名度を上げている」。ともに県内外の高級料理店や旅館が、刺し身などにして提供している。

 稚魚の生産拠点に新設したのは、養殖に使う水に溶け込んだ窒素ガスを効率的に抜く「ばっ気槽」。水に窒素が多く含まれると稚魚の血管に気泡ができ、重症化した場合は死亡するという。これまでも簡易な装置はあったが処理量に限りがあり、増産のネックになっていた。県は17年度に3千万円を投じて新設した。

 農林水産統計によると、信州サーモンや信州大王イワナを含むマス類の県内生産量は17年度、1453トンで全国一。消費者の魚離れで、同じマス類のニジマスの生産量が減る中、信州オリジナルの刺し身として高級感を求める消費者の需要が伸び、養殖業者の期待も高まっている。

 稚魚の増産に合わせ、県は手軽に使える加工品の提案も進める。これまでは1匹ごとの売買が多かったが、ペンションなど小規模な宿泊施設や飲食店の需要を開拓することも想定。県水産試験場は、解凍すればそのまま提供できる切り身の冷凍技術を研究しており、21年度までに技術を確立する計画だ。

(12月11日) 信毎Web
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