2018年12月13日
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20181213-OYTET50005/

 名古屋第一赤十字病院(名古屋市中村区)で、薬剤師が向精神薬約200錠を無断で持ち出していたことがわかった。外部からの通報を受け、愛知県は12日、麻薬及び向精神薬取締法に基づき、同病院へ立ち入り検査に入り、速やかな県への届け出や薬剤管理の徹底を指導。病院は同日夕、持ち出しを届け出た。

 同病院によると、調剤助手が11月20日、向精神薬の在庫数を確認した際、管理簿の記録と一致しないことに気付いた。原因は職員による記載ミスだったが、その後、管理簿と患者の電子カルテを改めて照合した結果、薬剤師が6月中旬〜11月中旬、いずれも向精神薬の「サイレース」10錠、「ハルシオン」10錠、「マイスリー」175・5錠を無断で持ち出していたことが判明した。向精神薬は医師の診断で患者に処方されるが、薬剤師は実際の処方量より多い錠数を管理簿に記載し、水増し分を持ち出したという。薬剤師は11月29日、病院側の聞き取り調査に「眠れなかったので自分で服用した。出来心だった」と説明し、今月3日以降、体調不良で入院しているという。

 県医薬安全課によると、向精神薬は睡眠導入剤などとして使われるが、依存性が強く過剰に服用すると、けいれんや幻覚などの症状を引き起こす恐れがある。そのため、麻薬及び向精神薬取締法は、盗難や一定量の紛失が判明したら速やかに都道府県知事へ届け出るよう義務付けているが、同病院は県の指導を受けるまで届け出をしていなかった。

 同病院の担当者は読売新聞の取材に対し、「直ちに死に至る薬ではなく、持ち出された量が大量ではなかったので、全容がわかってから県に届け出ようと思っていた」と釈明。向精神薬を保管する棚の引き出しに鍵をかけ、持ち出しは上司と2人1組で行うなどの再発防止策を取っているという。