☆ 夜の政治スレです

企業や団体の不正をただすため、解雇や左遷などの報復を受けることなく内部告発ができる法律を――。こうした思いを抱きつつ、公益通報者保護法改正に向けた審議を見守ってきた関係者はいま、一様に沈み込んでいる。審議の舞台になっているのは、内閣府消費者委員会の公益通報者保護専門調査会。その議論が大詰めを迎え、内部告発者に不利益な取り扱いをした組織に対する罰則規定が法律にならないことが確定したからだ。加えて、メディアに対する内部告発へのハードルは今より高くなりそうな雲行きとなっている。「消費者庁は公益通報を抑制する現行法の問題点を放置する一方、企業が不正を内部で握りつぶしやすい環境づくりに加担するのか」。内部告発の経験者や弁護士らからはそうした批判が噴き出している。

11月22日、東京・霞が関。中央合同庁舎第4号館の8階で、「内閣府消費者委員会の公益通報者保護専門調査会」が開かれた。長々とした名のこの調査会こそ、改正法案の審議の場である。

1月から始まった審議の場でこの日、消費者庁は4組の資料を提出した。改正法案の提出予定は来年の通常国会。いずれの資料もそれに向けて、これまでの議論を取りまとめ、改正法案の作成を担う官庁としての意見を示したものだ。

そのうち、「その他の論点について」はA4サイズで14ページ。その中の「不利益取扱いに対する刑事罰」には、こんな言葉が並んでいる。

「(通報者に対する)不利益取扱いの是正のためには、(中略)行政措置を導入するにしても、まずは助言、指導、勧告により是正を図っていくことが適当」「したがって、命令制度の導入ひいてはそれを前提とした間接罰の導入については、今後の検討課題とするのが適当」

そして、内部告発者を解雇や左遷した企業への罰則適用をめぐる議論の結論として、こう書かれていた。

「以上を考慮すると、不利益取扱いに対する刑事罰については、慎重に検討すべき」

宅配便大手のヤマトホールディングス(HD)では今年夏、子会社による法人向け引っ越し料金の過大請求が発覚。8月にHD経営陣が会見で謝罪した。この不正は組織内で告発されたが、長期間、握りつぶされていたという(写真:読売新聞/アフロ)

オリンパスや秋田書店、金沢大医学部、千葉県がんセンター……。2006年に公益通報者保護法が施行されて以降、全国で数多くの内部告発が行われ、組織内の不正が次々に明るみに出た。同時にそうした「告発者」に対する解雇や左遷といった組織側の仕打ちも大きな問題となった。そうした結果、勇気を振り絞って告発した労働者に対する不利益な取り扱いには罰則を導入すべきだ、という意見が広がってきたのである。

消費者庁が提出したペーパーは、それを「NO」とした。

調査会の席上、座長である山本隆司・東大大学院教授は「(この結論に対しての)各委員のご意見は?」と口を開き、会場を見回した。異論や反対の声は上がらない。座長を除く委員10人のうち半数近くは過去の審議で、罰則導入に前向きな意見を表明していた。それでも意見は出ない。

法改正の最重要ポイントだった通報者の保護。報復を許さないために事業者への罰則を導入すべきだとの意見が、あっさりと見送られた瞬間だった。

12月18日の専門調査会では、消費者委員会に提出される調査会作成の「報告書(案)」が示されたが、前回と同じ文言が示され、やはり前回と同様に口を開く委員はいなかった。

前回の調査会を傍聴していた中村雅人弁護士(東京)は「いやぁ……愕然としました。危機的な状況です」と言う。

「罰則導入は議論の中で最大のテーマだったはずなのに、見事にスルーされてしまった。驚きましたね」

中村弁護士は、企業・団体から報復を受けた内部告発者らの民事訴訟を数多く手掛けた実績を持つ。公益目的で不正を明るみに出したばかりに、裏切り者呼ばわりされ、左遷や降格、解雇されていく労働者たち。その声にずっと耳を傾けてきた。

「罰則が導入されないとなると、内部告発によって解雇処分などを受けた人は、企業が(勧告や指導といった)行政措置に従わない場合、これまで通り、自ら訴訟を起こして会社側と闘わねばなりません。行政措置には強制力が伴いませんから。何のための法改正でしょう?」

日本弁護士連合会主催のシンポジウム「公益通報者保護法の抜本改正に向けて」=2018年12月13日(撮影:本間誠也)

中村弁護士は続ける。

「消費者庁が示したあの文書の内容は、経済界や事業者側の要望を色濃く反映したものです。

※続きはソースでご覧ください。
https://news.yahoo.co.jp/feature/1173