「もう耐えられない」 ゴーン容疑者捜査の端緒 外国人幹部の告白
毎日新聞 2018年12月19日 20時02分(最終更新 12月20日 07時47分)

 「もう耐えられない」。マレー系英国人で英国弁護士資格を持つ専務執行役員は今年5月、日本人幹部にそう打ち明けた。幹部が「全部話してくれ」と問い返すと、「……会長の資金操作があまりにもひどい」。一旦重い口を開くと、そこからは日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)の巨額な報酬隠しや私的流用、自らの関与を告白し始めた。この告白が、半年後、ゴーン前会長の逮捕につながることになった。

 横浜市の日産グローバル本社21階には「ゴーンズルーム」と呼ばれるゴーン前会長の執務室があり、隣接するのが前会長の職務をサポートする中枢組織の最高経営責任者(CEO)オフィスだ。執行役員は2014年4月、そこのトップに就任。社内から「こんなに出世するとは思いもしなかった」と陰口をたたかれるほど重用されたのも、前会長の右腕として報酬隠しを主導したとされる前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)とともに不正に関与してきたからだとみられる。それがなぜ翻意したのか。

 この執行役員の告白より前、監査役らは10年にオランダに設立された子会社「ジーア」に不審を抱いていた。この会社を通じて前会長用にレバノン・ベイルートなど海外の複数の高級住宅が購入されており、その不明朗な金の流れを追う極秘の調査チームが動き始めていた。日産関係者は「執行役員は元来がまじめな性格で、極秘の調査チームの接触を受けて洗いざらい話し始めた」と明かす。

 調査チームは長年前会長に仕えていた日本人の秘書室幹部の説得にも成功。執行役員と秘書室幹部の調査協力によって調査は加速、逮捕容疑となった50億円超の報酬隠しを含む前会長らの不正の証拠が積み上げられていった。

 前会長はなぜ報酬を隠す必要があったのか。伏線として、CEOを務める仏自動車大手ルノーでの高額報酬批判がある。別の執行役員は「フランス国内での批判を避けようとする意味があったのだろう」と語る。

 前会長のルノーCEO再任がパリの株主総会で決まった6月。調査は山場を迎えていた。内部調査に関わった関係者は「内容が内容だけに会長の耳に入ればクビになる。ごく限られた人間が閉ざされた空間で事を進めた」と振り返る。前会長が月に数日しか出社しないことが秘密保持には好都合だった。

(続きはソースで)
https://mainichi.jp/articles/20181219/k00/00m/020/192000c?inb=ys
https://cdn.mainichi.jp/vol1/2018/12/19/20181219k0000m020283000p/9.jpg?1