https://globe.asahi.com/article/12021315
※リンク先に動画あり 「コロラドの大麻ツアーに同行した」のキャプション
■州政府は「成功」 将来の影響はまだ見えず
麻薬をめぐる政策が、世界で大きく変わり始めている。特に注目を集めているのが、「ソフトドラッグ」に分類される大麻をめぐる動きだ。
今年10月にはカナダが、それまで医療用途に限って認めていた大麻の使用を、娯楽用途にも広げる合法化に踏み切った。先進7カ国では初めての動きだ。
そのカナダが合法化の「先輩」と見るのが、2014年1月に娯楽用大麻を合法化した米国・コロラド州だ。
5年たち、大麻はコロラドに何をもたらしたのか。10月、現地を訪ねた。

米国では、連邦(国)の法律では娯楽用大麻の使用を認めていないが、州ごとに異なる対応が認められている。
コロラド州は全米に先駆けて2014年1月から娯楽用大麻を合法化。いまでは同じ動きが10州にまで広がった。
コロラド州デンバーの空港から市中心部へは、鉄道で約40分。車窓からは、緑十字を掲げた大麻販売店の看板が目に飛び込んでくる。まるで郊外型の薬局チェーンのようだ。

コロラド州の統計によると、2017年の州内の大麻の販売業者は1000近く。14年に年間7億ドル(約791億円)ほどだった大麻の売り上げは、
17年までに15億ドル(約1695億円)を超えている。今年はさらにそれを上回る勢いで、デンバーでも街中を歩けばそこかしこで大麻の販売店が目につく。
そのデンバー中心部の市街地から、車で約15分。医療用大麻の販売店に隣接した倉庫のような外観の建物に、めざす店「コーヒー・ジョイント」はあった。
娯楽用大麻を合法化したコロラド州だが、公共空間での使用は厳しく規制されている。
この店は、州で初めて公共空間で大麻が使える場所としてライセンスを取得した、言わば「大麻ラウンジ」のような店だ。

「ようこそ。身分証明書をチェックします」。重たい鉄の扉を開けると、長いひげをたくわえた男性にパスポートの確認を求められた。
いかつい容貌に一瞬たじろぐ。年齢の確認を終えると、にっこり笑って「どうぞ」。
中は明るく、普通の雑貨店のよう。この場で使うことのできる大麻吸引用の器具などが用意され、無料のドリンクサービスなどもある。
大麻入りのお菓子などを食べることもできる。ただし、コロラド州では公共空間での喫煙が禁じられているため、煙を吸う形での大麻の使用は許されていない。

どんな人がやってくるのだろうか。訪れた時には来客はいなかったが、そのいかつい男性、マネジャーのデビッド・ヨケルソン(30)が
「来客は1日30人ほど。近所の人もいるけど、州外からの旅行者が多いかな」と教えてくれた。オープンしたのはこの春だ。
「この5年で、大麻への好奇心を持つ人がすごく増えている。でも、みんなどこでどう使っていいか分からないから、ここに来る。安全な使い方を同時に広めていくことも、
この店の大事な役割だと思っている」とヨケルソンは言う。

ヨケルソン自身は、東部ニュージャージー州の出身。娯楽用大麻が解禁されるのにあわせてコロラドに移り、大手の大麻製品メーカーのアドバイザーなども務めた。
片頭痛と不眠に悩み、医師に大麻を処方してもらっている患者でもある。
だからこそ合法的な大麻利用が広がるよう、安全に使ってもらうこと、法律を守ることに特に気を使っているという。

医療用であれば、大麻使用を解禁している州は全米30州にものぼる。わざわざコロラドに住むこともないのでは。そう聞くと
「娯楽用が解禁された地域では、質のいい大麻が安く手に入る。これが大きいんだよ」と返ってきた。
医療用大麻を買うには、医師の処方箋が必要だ。そのためには医師の診療を受けなければならない。もちろん、その分手間もお金もかかる。
といって、娯楽用大麻が認められていない州では、その手続きを飛ばせば違法だ。それでも闇市場で大麻を買うとなると、密売人が売るものを買うことになる。
中には出どころ不明のものも多い。

これに対して全面的に合法化された地域では販売店間の競争が起き、より良い品質の大麻を扱うことでほかの店と差をつけようという店が出てきている。
さらに、価格も下がってきた。
州の調査によれば、大人向けの大麻の花の価格は、14年から17年にかけて1グラムあたり14ドル(約1580円)から5ドル(565円)へと65%も下落している。
「大麻と言っても、モノによって効果は変わってくるし、体質との相性もある。それを分かって使うことで、安全性も高まる。
いろんな選択肢ができたことが、この5年の大きな変化だね」

※続く