アメリカのメディアは、情報を出さない東京地検や日産にフラストレーションをためながら、詳しい記事を書けずにいたが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が、ケリー前代表取締役の夫人、ドナ・ケリーさんが保釈嘆願のビデオを流すと状況は一変した。アメリカでは、日本の司法の前時代的で非人権的な拘留であると、かなり批判が高まっている。

ドナ夫人は、ケリー前社長が厳しい腰痛と脊髄の病気を抱えていて手術直前のところを、日産に「どうしてもビデオ会議ではダメな、参加が必須な会議があるから」と騙されて飛行機に乗せられ、日本に着いたところを逮捕されたと、怒りを見せる。常備薬も飲ませてもらえず、このままだと著しい障害を抱えかねないと、涙ながらに保釈を訴えた。

ニューヨーク・タイムズも批判

原文ではクリスマスまであと10日あまりとの言葉があったことから(つまりリリースの5日も前)、WSJが出すタイミングを計っていたことや、あるいは編集に時間をかけたことを伺わせる。発言は、事件のことについては無罪で、あくまで西川社長の仕組んだ罠だと断じただけで、5分ほどの嘆願ビデオのほとんどは、日本の検察=勾留制度への厳しい批判になっている。

ニューヨーク・タイムズは、19日、ケリー容疑者の病状を報道しながら、それでも保釈をしないのは、勾留中に自白をとるための日本流のやり方であると批判している。
アメリカの企業弁護に詳しいステファン・ギブンズ弁護士の発言を引用して、こういうことでは外国人企業人は、いつ次は自分の家の扉を、
日本の警察に叩かれるかと恐怖で夜も眠れないはずと、まるで戦前の日本の特高警察に重ね合わせるような感情的コメントを載せている。

しかし、それでも自白が公判で重んじられる現在の裁判の態様は変わっておらず、自白をとるために検察が必死であり、
そのために勾留期間が続くという仕組みには改革も手が付けられていない。
過去には、鈴木宗男元衆議院議員が、437日の長期にわたり勾留されたこともあった。
鈴木氏の著書「汚名 国家に人生を奪われた男の告白」を読むと、これが21世紀の出来事かと目を疑う。