ワシントン条約で国際取引が規制されている東南アジア原産のコツメカワウソの密輸個体を売ろうとした男らが、警視庁に逮捕された。テレビ番組で紹介されるなどし、近年国内で「かわいい」と人気が高まっており、密輸の横行が懸念されている。

「知り合いからもらったカワウソがいる。買ってもらえませんか」。2018年夏ごろ、コツメカワウソなどの小動物と触れ合える店「コツメイト」(東京都豊島区)に1本の電話がかかってきた。

代表の長安良明さんはインドネシアで同国政府の許可を得てコツメカワウソの保護・繁殖や正規輸入に取り組んでおり、不審に思って「ワクチン接種はしたんですか」と質問。電話の男は「改めて連絡します」とはぐらかし、「1回に10頭くらいどうか」などとさらに売り込みを続けてきた。

数日後、2頭を段ボールに入れて持ってきた男に原産国を問うと、当初は「知人からもらった」と言葉を濁したが、話しているうちに「タイから(密輸した)」と明かした。店で待ち構えていた警視庁の捜査員が対応し、男ら2人は外為法違反(無承認輸入)容疑で10月に逮捕された。

ペットとしてもコツメカワウソの需要は高まっているとみられ、国内の販売価格は急騰。野生生物取引監視団体「トラフィック」によると、海外で数千円で仕入れた個体が150万円を超す価格で取引される例もあるという。

長安さんは「同じような購入打診の電話やメールは何度も来ている」と話し、密輸した個体の疑いがあるとみている。

東京女子大の石井信夫教授(保全生態学)は、動物の密輸について「種や生態系に重大な影響が生じたり、動物が感染症や寄生虫をもっていたりするリスクがある」と指摘。「動物を入手する際は合法的なものかどうかを確認することが最低限必要」と話している。

2018/12/24 11:30
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39220250Q8A221C1CC0000/