【ワシントン=鳳山太成】トランプ米大統領は8日夜(日本時間9日午前)、建設費の予算計上を求める「国境の壁」を巡り、国民向けにテレビ演説した。不法移民がメキシコ国境を越えて入国している現状を「人道的な危機だ」と指摘。「国境警備に極めて重要だ」と壁建設の必要性をアピールした。議会承認を得ず建設を進めるための非常事態宣言は見送った。

トランプ氏は8日午後9時から大統領執務室でテレビカメラを通して約10分間演説した。国境を越えて犯罪や違法薬物が入り込んでいると指摘し「現状を必ず終わらせる」と語気を強めた。国境監視の職員増加などとあわせて、57億ドル(約6200億円)を鉄製の障壁をつくる建設費として認めるよう議会に要求した。

壁建設費を巡る与野党の対立を受け、連邦予算の一部失効による政府機関の一部閉鎖は8日で18日目に入った。トランプ氏は演説で「(政府閉鎖に至ったのは)民主党が国境警備の予算計上を拒んでいるからだ」と野党・民主党に矛先を向けた。民主党執行部は「大統領は危機をでっち上げるのをやめるべきだ」(ペロシ下院議長)と反発しており、事態打開につながるかは不透明だ。

トランプ氏が検討してきた非常事態宣言については演説では触れなかった。議会の承認を得ずに米軍の予算を振り向けて壁建設を強行する案だが、憲法違反との指摘もあり反対論も根強い。

トランプ氏が大統領執務室から国民向けにテレビ演説するのは初めて。ブッシュ(子)元大統領が2001年の同時テロを受けて実施するなど、歴代大統領が重大なメッセージを国民に伝えるときに同様のスタイルで演説してきた。

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2019/1/9 11:41
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3979698009012019MM0000/