特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)が関与したとされる2件の一般人襲撃事件を巡り、被害者側から損害賠償請求訴訟を起こされている同会トップの野村悟被告(72)=殺人罪などで起訴=が「道義的責任を感じている」とする陳述書を福岡地裁に提出していたことが判明した。陳述書では被害者らに見舞金を支払う意向も示している。関係者によると、同市にある本部事務所の売却益を見舞金に充てることを検討しているという。

野村被告側は争う方針だが、見舞金を支払うことで和解による解決を模索する考えとみられる。ただ被害者側が和解に応じるかは不透明だ。

2件は2012年4月に北九州市で福岡県警の元警部が銃撃されて重傷を負った事件と、14年5月に同市で歯科医師男性が刺されて重傷を負った事件。野村被告は両事件で組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)などで起訴されているが、公判は始まっていない。

一方、両事件の被害者側弁護団は、野村被告には民法上の使用者責任があったなどと主張し、野村被告ら幹部を相手取り、それぞれ2968万円と8365万円の損害賠償を請求。2月1日に第1回口頭弁論が予定されている。

関係者によると、野村被告は昨年10月29日付の本人名義の陳述書で「両事件のいずれにも関わっておらず、実行犯の使用者でもありません」と法的責任を否定。その一方で「工藤会のかつては上に立った者として道義的な責任は感じていますので被害者に見舞金の支払いを考慮している」としている。

2019年1月11日 06時45分

https://mainichi.jp/articles/20190110/k00/00m/040/273000c