川端か谷崎か三島か… ノーベル文学賞、半世紀前の議論


 川端康成かマルローかオーデンか。はたまた川端か谷崎か三島か――。
現代の我々ですら頭を抱え込む難題に、50年前のスウェーデン・アカデミーは
悪戦苦闘していた。川端が1968年にノーベル文学賞を受けてから50年が
過ぎ、新たに公開された選考資料からは、遠い異国の文学を評価しようと
苦心する姿が見えてくる。

 ノーベル文学賞は発表から50年間、候補者の名前や選考過程が非公開と
されている。川端を選んだ68年の選考資料が、ストックホルムの
スウェーデン・アカデミーで今月2日、初めて公開された。

 今回公開された資料は、ノーベル委員会の評価をまとめたもの。
ノーベル委員会はスウェーデン・アカデミー内に置く作業部会で、
数十人の候補者リストから最終候補を5人ほどにしぼり、アカデミーに
評価を提出する機関だ。同委員会の評価をもとにアカデミー会員が議論と
投票を行い、受賞者を決める。つまり、委員会の評価や判断が受賞を
左右するとも言える。

 資料によると、当時のノーベル委員会のアンダーシュ・エステルリング
委員長は「1、アンドレ・マルロー 2、W・H・オーデン 3、川端康成
 サミュエル・ベケットには賛成しかねる」と順位をつけてアカデミーに
評価を報告していた。川端への言及は「昨年までの検討を参照してほしい。
私は彼が日本文学を真に代表すると認めている」にとどまっている。

 その後、アカデミー会員の投票…(以下有料会員限定記事)


朝日新聞・中村真理子(2019年1月14日20時30分)
https://www.asahi.com/articles/ASM1762HPM17UCVL02C.html?iref=comtop_8_01