1/15(火) 11:44配信
毎日新聞

 東京電力福島第1原発事故後、福島県から大阪市に自主避難している小学生の兄妹が6月、兵庫県芦屋市の「奇跡の街合唱団」のミュージカルに出演する。作品は「夢学校―いのちの薔薇(ばら)園―」。架空の街のストーリーだが、原発事故、豪雨災害を題材に兄妹が見聞きした被災者の実体験がちりばめられ、兄妹は「誰かを勇気づけられたらうれしい」と練習に励む。

 兄妹は福島県郡山市内のマンションで東日本大震災に遭い、避難を余儀なくされた小学5年、森松明暁(めいよう)さん(10)と2年の妹明愛(めいあ)さん(8)。

 原発事故の避難指示区域ではなかったが、両親は当時3歳と0歳だった兄妹を外で遊ばせることにちゅうちょし、震災から2カ月後、勤務医の父親は福島に残り、兄妹は母親の明希子さん(45)と大阪に避難。それから約7年半、母子避難を続けている。

 合唱団は阪神大震災以降、全国の被災地で公演を続けている。東日本大震災避難者の会「Thanks&Dream」や「原発賠償関西訴訟原告団」の代表を務める明希子さんが、合唱団を主宰する檀美知生さん(71)、村嶋由紀子さん(71)夫妻と知り合い、村嶋さんがバーネット原作の児童文学「秘密の花園」をベースに脚本を書き上げた。

 舞台は、原発事故で子どもが避難する高台にあるお屋敷。近くの住民が放射線を巡り「健康に悪影響があるのでは?」「政府は大丈夫と言っている」とささやきあっていると、豪雨災害が追い打ちをかけ、住民も屋敷に避難しようとする。しかし、役人が選別しようとし、少年が「差別するな! 僕らはみんな同じだ」と叫ぶ――というストーリーだ。

 この少年を明暁さん、その妹を明愛さんが演じる。架空の街でのお話だが、明暁さんは「県外に引っ越し、放射能を浴びたと言われ、いじめられた子もいた。どんな時も『差別はダメ』という気持ちを込めたい」と語る。

 村嶋さんは「放射能や自主避難に対する考え方は人それぞれ」としつつ「作品を通じて被災した人に気持ちを重ねてもらえればうれしい」と話し、兄妹ら子どもと一緒に舞台に立つ大人の合唱団員も募集している。

 公演は6月2日、芦屋市業平町の市民センター、ルナ・ホールで。問い合わせは村嶋さん。【生野由佳】

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