ずさんな審査で論文を掲載し掲載料を得るインターネット専用の粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」と同様に、参加料収入が目的とみられる国際学会が国内外で開かれている。学会の体裁をとるが発表内容の事前チェックはほとんどなく、研究者は事実上、参加料を払うだけで「国際学会で発表した」というお墨付きが得られる。専門家は「ハゲタカ学会」と呼び、問題視している。

大東文化大のジェームス・マクロスティ教授(英語教育論)は2014年、ハゲタカ学会の実態調査のため、ハゲタカ学会の疑いがある学会主催者に科学的に無意味な内容の発表概要を送った。すると、台湾やタイ、ポーランドなどが拠点の6学会の主催者がそのまま受理し、学会発表を認めた。学会参加料は約4万5000〜8万円だった。

国際学会での発表は論文発表と共に研究業績の一つに数えられ、国の科学研究費補助金の研究実績報告書などに記載される。通常、学会の主催者は発表概要を事前にチェックし、発表に値するか調べる。このため、発表者としての参加が難しい国際学会も多い。

一方、ハゲタカ学会は、研究がずさんでも実質的に参加料さえ払えば発表でき、研究業績にカウントされる。ハゲタカ学会に詳しい研究者によると、無関係の複数分野にまたがる学会を合同で開く▽参加を勧誘するメールを不特定多数に送る▽ホームページに運営者情報が明記されていない▽発表概要の審査が異常に速い――などの特徴がある。

ハゲタカ誌を発行する出版社が主催する例も多く見られ、学会発表を重ねると内容をまとめてハゲタカ誌に投稿するよう勧誘する例もある。日本を含め世界各地で開かれ、総数や参加人数などの実態は分かっていない。

マクロスティ教授は「科学的根拠が乏しい内容でも、ハゲタカ学会では発表できてしまう。意味がない学会で不当に業績を稼ぐのは間違いで、研究費ももったいない」と批判する。

ハゲタカ誌の問題に詳しい栗山正光・首都大東京教授(図書館情報学)は「ハゲタカ学会は研究者に需要があるため、ビジネスとして成り立っている。国際学会での発表が研究者の評価指標の一つになっている以上、ハゲタカ出版社が学会も開いて参加者を集めているのは問題だ。研究者はこうした学会を利用しないよう襟を正すべきだ」と話している。

ソース/毎日新聞社
https://mainichi.jp/articles/20190119/k00/00m/040/007000c