米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、安倍晋三首相がテレビの討論番組で「(辺野古沿岸部に)土砂を投入していくにあたって、あそこのサンゴは移している」と発言した内容が不正確と批判されている問題で、番組を放送したNHKの木田幸紀放送総局長は23日の記者会見で「番組内の政治家の発言については、コメントする立場にない」との見解を述べた。

 安倍首相の発言は、6日にNHK総合で放送された「日曜討論」であった。辺野古沿岸部で昨年12月から始まった土砂投入の問題で、司会者の「沖縄県民の理解をどう得るか」との質問に答えた。実際に防衛省沖縄防衛局が移植したのは土砂投入区域外の一部のサンゴで、玉城デニー知事が「現実はそうなっていない」とツイッターで指摘するなど、発言内容は不正確と批判する声が出ていた。

 関係者によると、安倍首相の発言は放送2日前の4日に収録された。そのまま放送したことについて、木田放送総局長は「基本的に生出演で発言してもらうのが番組の趣旨。今回も他の出演者は生出演で、そこは公平に対処するのが番組のスタンス」と説明。また11日の「ニュースウオッチ9」で、安倍首相の発言を玉城知事らが批判していることを報道しており、「放送した内容が全て」とした。【屋代尚則】

NHK自身が考えるべきこと

 山田健太・専修大教授(言論法)の話 権力をチェックするという意味でも、首相の発言は厳密にその中身を監視していくことが報道機関には求められる。NHKの言い分は「首相の発言だからそのまま放送した」と聞こえてしまう。そのようなあり方が正しいかどうか、NHK自身がもう一度きちんと考えるべきだ。

毎日新聞 2019年1月23日 22時01分(最終更新 1月24日 01時59分)
https://mainichi.jp/articles/20190123/k00/00m/040/240000c