「低空飛行の客観的な証拠はあるのか」。韓国国防省が、日本の哨戒機が韓国艦に対する「低高度の威嚇飛行を行った」と主張したことに対し、海上自衛隊幹部は「何を根拠に主張しているのか」と否定し、不快感をあらわにした。レーダー照射問題後も「日韓の未来志向の関係構築」を呼び掛けた日本側の努力は、かき消された形だ。

 韓国側が低空飛行を主張した東シナ海の海中岩礁・離於島(イオド)は、長崎市の西方約450キロ。韓国の済州島南西方約150キロにあり、日中韓の防空識別圏(ADIZ)が重なる海域だ。日本側はP3C哨戒機を配備する海自鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)の管轄エリアとなっている。

 ◇三次元レーダー装備しているのか

 ADIZは領土・領空の範囲を決めるものではなく、領空・領海の外側に防衛ラインを引き、公海上で警戒したり、領空・領海に接近する航空機や艦船に警告したりするために存在する。ADIZに航空機が飛来すれば航空自衛隊の戦闘機が発進し、艦船が航行すれば海自の哨戒機や護衛艦が監視することになる。
 韓国側は、自衛隊哨戒機が距離約540メートル、高度約60〜70メートルで「低高度の近接威嚇飛行」を行ったとし、今月18日、22日にも韓国艦に対し「威嚇飛行」を実施したとも主張した。
 海自関係者によると、艦船から航空機までの距離は水上レーダーで分かるが、高度については艦船が3次元レーダーを装備していなければ目視で測定するしかないという。同レーダーは比較的新しい軍艦に装備されているといい、今回の韓国艦が装備しているかどうかは不明だ。

 自衛隊幹部は「火器管制レーダー照射問題で分が悪く、後戻りできない韓国側は国内世論向けに、海自の通常の警戒監視を低空飛行と言い続けるのだろう」と指摘。「韓国側が主張する高度60〜70メートルの飛行というのはあり得ない。客観的な証拠があるなら開示すればいい」と話した。
 防衛省では連日、陸海空の統合図上演習が行われており、迷彩服姿の隊員たちも、韓国国防省の発表にうんざりした様子だった。

 ◇太平洋艦隊司令官と24日会談
 防衛省では23日、日豪防衛相会談が行われ、同日午後6時半から行われた岩屋毅防衛相の記者会見は、もともとは会談結果を発表する場だった。しかし、会見では韓国国防省の発表内容に質問が集中。オーストラリア軍は北朝鮮船の瀬取り対策でも緊密に連携している重要なパートナーだが、会談の成果もかき消された形となった。
 岩屋防衛相は24日には米太平洋艦隊司令官と同省と会談する。悪化する日韓関係について意見交換するのかも注目される。

2019年01月24日07時00分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019012400293&;g=soc