人工授精して育てた高級魚ノドグロ(標準和名アカムツ)の稚魚を放流している富山県農林水産総合技術センター水産研究所(滑川市)は、今春の稚魚の放流を中止すると発表した。放流予定だった稚魚約1万1千匹が全て死んだため。2013年に世界で初めてノドグロの人工授精に成功した同研究所は、16年から計約8万9千匹の稚魚を放流してきた。

 同研究所によると、昨秋に富山湾や新潟県沖で捕獲したノドグロから採取した卵を孵化(ふか)させ、計約1万3千匹の稚魚を育てていた。しかし昨年末〜今月初めに約1万1千匹が死んだ。残る2千匹は種苗生産技術の研究に使うため、今年の放流は中止にしたという。

 死んだ稚魚は、水に溶け込んだ空気が過飽和状態になった時に魚の血管内などに気泡が生じる「ガス病」になったという。同研究所は、稚魚を飼育する水槽に海水を送り込むポンプや配管に隙間ができ、空気が過剰に水に溶け込んだとみている。同研究所の田子泰彦所長は「今回の事故は大変残念。教訓にしたい」と話している。(高津守)

2019年1月26日09時02分
朝日新聞デジタル
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