30日の東京株式市場で新興市場の株価が全面安になった。きっかけは東証マザーズ市場で時価総額が最大の創薬ベンチャー、サンバイオの変調だ。最有力のバイオ株とされてきたが、前日に公表した治験結果が失望を招いた。これで個人の投資心理が悪化し、メルカリなど新興市場の主力株が全面安になった。東証マザーズ指数の下落率は一時前日比7%を超えた。

日本取引所グループは30日午前、東証マザーズ指数先物の売買を一時中断する措置(サーキットブレーカー)を発動した。先物が一定の水準まで急落したためで、停止したのは10時34分から10分間。その後、制限値幅の下限を拡大して取引を再開した。

急落の引き金を引いたのはサンバイオだ。29日夕に慢性期脳梗塞向けの再生細胞医薬品「SB623」の臨床試験について主要評価の項目を達成できなかったと発表した。この新薬への期待からサンバイオ株は1月21日に上場来高値(1万2730円)と今年に入って5割超上昇していた。それが一転して市場の失望を招く結果となり、個人の売りが殺到した。

30日の東京市場でサンバイオ株は気配値を前日終値を3000円(26%)下回る8710円とストップ安水準(制限値幅の下限)まで切り下げた。30日午前の時点で取引が成立していない。目標株価を7800円としてきたみずほ証券の野村広之進シニアアナリストは「単純に日米の慢性期脳梗塞に関連する収入、支出を除いた場合の目標株価は1500円前後と試算される」と分析する。

サンバイオの失望売りは、その他のバイオ銘柄に広がった。同じくマザーズに上場するそーせいグループやナノキャリアが一時10%安となったほか、アンジェスが一時15%安となった。東証1部に上場する新薬開発支援の新日本科学も一時7%安だった。

こうしたバイオ株は今年に入り、バブルともいってもいいほどに個人マネーが大量に流入してきた。米中貿易摩擦や米国の政府機関の閉鎖など外部の不透明感が強まるなかで、個人マネーがこうした銘柄に集中して向かったからだ。だが、足元では「その逆回転が起きている」(松井証券の和里田聡常務)という。

東証マザーズ市場の時価総額上位の銘柄も全面安となっている。メルカリが一時5%安となったほか、ミクシィも一時6%安となった。新興市場全体に売りが波及することを警戒し、保有株を手放す個人が増えた。

サンバイオ株がどこで下げ止まるか見えない中で、信用取引で同社の株を購入していた個人が「(株価急落による)追加担保の差し入れ義務(追い証)を避けるための売りを出した」(ネット証券幹部)

東証マザーズ指数は取引時間中として15日以来となる900割れとなった。年明け以降は新興市場の回復が個人投資家を再び活気づかせてきたが、サンバイオの急落を受けて楽観論が後退する可能性がある。(関口慶太)

米国の研究拠点で再生細胞薬の開発を進めてきた
https://www.nikkei.com/news/image-article/?R_FLG=0&;ad=DSXMZO3966983004012019916M04&ng=DGXMZO40655180Q9A130C1000000&z=20190130

2019/1/30 11:39
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40655180Q9A130C1000000/?n_cid=SPTMG002