あだ名だったのに…本物の鳥博士に 福井の学芸員、働きながら博士号


 福井県の福井市自然史博物館の学芸員で動物担当の出口翔大さん(29)が、
仕事の傍ら鳥の生態を研究し博士号(農学)を取得した。鳥が大好きで
子どもの頃に「鳥博士」と呼ばれていた出口さん。研究で培った知識を
生かし「自然を自分の手で解明して、体験談として面白さを伝えていけたら」
と意気込んでいる。

 出口さんは大学卒業後、いったん民間企業に就職したが、
子どもの頃からの夢だった学芸員になりたいと2013年、新潟大学大学院に入学。
15年に博士後期課程に進学し、16年に新潟県内の自然科学館で、翌年には
福井市自然史博物館で学芸員として採用された。働き始めてからも研究を
続け、昨年4月に博士号を取得した。

 研究テーマにはスズメの仲間の渡り鳥ノジコが好む自然環境と、
田んぼの環境の変化が与える鳥への影響を選び、4年にわたり新潟で
調査活動した。学芸員になっても休日には、早朝から山あいに出かけ、
一日に環境が異なる田んぼ12カ所ほどを回って鳥を観察。雪で車の移動が
難しい冬季は、10キロほど歩いて田んぼまで調査に行った。

 その結果、ノジコは日当たりが良く草が生い茂る森林の周縁部を好む
ことや、整備が行き届いたり、手つかずだったり環境が異なる田んぼでは、
観察できる鳥の種類が異なることを発見した。

 福井で働き始めてからは、仕事後に毎日約3時間、休日は約8時間論文の
執筆に明け暮れた。仕事と研究に忙殺される生活にも「どっちも好きな
ことをしてるからか、つらいと思ったことはなかった」と振り返る出口さん。
「あだ名だったのに、本当の鳥博士になっちゃいましたね」とはにかんだ。

 現在は動物専門の学芸員として観察会などを開いている。これからは
生態学の知識を生かして動物たちの意外な一面を伝えたり、身につけた
調査方法で自然を解きほぐしたりして「実体験を基に“生きた”面白さを
伝えたい」と話している。


福井新聞ONLINE(1/30(水) 18:23配信)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190130-00010002-fukui-l18