https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201902/0012039275.shtml

兵庫県姫路市砥堀の国道312号から播但連絡道路「砥堀ランプ」に向かうと、緑色の標識が目に飛び込んでくる。
「ICHI RIVER」(イチリバー)。2級河川「市川」の英語表記だが、何か変だ。国土交通省国土地理院が定めた英語表記基準や、
全国の事例を可能な限り調べると、やはり変だと分かった。

播但道砥堀ランプ前に掲げられる「イチリバー」の標識=姫路市砥堀
https://i.kobe-np.co.jp/news/sougou/201902/img/d_12039276.jpg

■国土地理院が駄目出し

兵庫県道路公社播但連絡道路管理事務所(福崎町)によると、標識は1973年の開通当時のものとみられる。
職員に経緯を尋ねると「単純に川をリバーに訳したんでしょうけど。あれ、何か変ですか?」と返す。

一方、姫路バイパス市川ランプ手前には「Ichikawa Riv.」の標識。直訳すると「市川川」となり、しっくりこない。

国土地理院に尋ねると、「イチカワリバーが正解」と言い切った。川の名前を取った地名などがある場合、
「カワ」「ガワ」を残して「リバー」を付け足す法則という。市川の流域には市川町があるので「イチリバー」は不正解となる。

同様に加古川市を流れる加古川はカコガワリバー、猪名川町がある猪名川はイナガワリバーとなる。

さらに、市川がイチリバーにならない法則があった。川を除くと漢字が1字、かつ読みが2文字以内の短い河川名は「カワ」「ガワ」を残すのだ。
ゆえに、イチリバーは2重のアウト。国土地理院は「日本人が聞いてぴんとこないからです」と理由を説明する。

現在、2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、全国各地で整備が進む英語表記は、地理院の法則に従っているとみられる。
だが、古い標識では法則を外れた表記も散見される。

ミミリバー=耳川(福井県)やショーリバー=庄川(岐阜県)のほか、淀川(大阪府など)の一部でヨドリバーの表記を見つけた。
ミミリバーとショーリバーは「1文字ルール」でアウト。大阪市淀川区があるヨドリバーは2重アウトだ。

外国人はどう捉えているのか。カナダ出身の外国語指導助手、フー・シンヤオさん(24)=福崎町=は
「本当の意味から『市川川』はどう見てもおかしいですね。私はイチリバーをお勧めします」。

国土地理院は「法則に強制力はないので、看板や観光マップの表記もまちまちだが、基準を広く知って」とPRする。

■氷ノ山や播磨灘もご注意

国土地理院は2016年に地名の英語表記基準を報告書にまとめ、都道府県などに周知。インターネットで見られる「地理院地図」にも反映されている。

山は単純に「Mt.」(マウント)に置き換えるが、「氷ノ山」は「直前が『ノ』などの助字」「読みが標準的な『やま』『さん』『ざん』でない」という例外に当たり、
「マウント ヒョウノセン」となる。

海は「Sea」(シー)とするのが基本だが、播磨灘は「ハリマナダシー」、瀬戸内海は「セトナイカイシー」。「灘」と「内海」は「海」に直訳しないという。

神社や寺は例外なく、施設の種類を含む日本語読みに英単語を追加する方式を採用する。