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タイ総選挙 王女の擁立取りやめで軍がより有利な状況に
2019年2月10日 4時39分

軍主導の暫定政権が続くタイで、来月行われる総選挙をめぐりタクシン元首相派の政党が国王の姉にあたる王女を首相候補に擁立しましたが、国王の批判を受けて擁立を事実上取りやめる事態となりました。タイ政治の専門家は一連の経過を経て、選挙戦は軍が設立した政党により有利な状況が生まれたという見方を示しています。

来月24日に行われるタイの総選挙をめぐっては、クーデターで政権を追われたタクシン元首相派の政党が8日、国王の姉にあたるウボンラット王女を首相候補に擁立し、プラユット暫定首相の続投が濃厚だった選挙の構図を一変させたともみられていました。

しかし、ワチラロンコン国王はその日のうちに「非常に不適切だ」などと批判する声明を発表し、タクシン派の政党は9日、擁立を事実上取りやめる事態となりました。

立憲君主制のタイで王室は政治的に中立であるべきという原則があり、国民の間には戸惑いや動揺が広がりました。

首都バンコクでは「王女の選挙参加を聞いた時はショックを受けました」といった声や「王女は政治に参加する権利はあると思うが、国王の命令には従うべきだ」といった声が聞かれました。

バンコクにあるタマサート大学の水上祐二客員研究員は今回の事態がタクシン派の政党にもたらした影響について「選挙の顔を失った状況で選挙を戦わなくてはならない。こういう騒動を起こしたマイナスイメージもある」と述べてダメージは大きいと指摘し、一連の経過を経て選挙戦は軍が設立した政党により有利な状況が生まれたという見方を示しました。

一方で、「タイの政治には予想もしないようなことが突然起こる、何かしらの変化が待っているという印象を国民に与えたと思う」と述べ、軍主導の政権が終わることを望む有権者たちに新たな期待をもたらした側面もあると指摘しました。