肌の環境によって温度を自動調節する生地、アメリカの大学などが開発
2019年2月13日 08:34 財経新聞
https://www.zaikei.co.jp/article/20190213/494480.html

●体温に応じて自動調節
 肌が熱いと感じているときには涼しくなり、必要とあらば寒さから肌を守る。今回、アメリカのメリーランド大学が中国の厦門大学と共同開発した生地の詳細は、科学誌『サイエンス』に掲載されている。

 従来の生地は、冬期の衣服ならば体から放出されたエネルギーを遠赤外線で閉じ込めて体を寒さから守り、夏は逆にそのエネルギーを外部に逃して涼しさを感じさせるといったたぐいのものが多かった。しかし、この双方の性質を兼ね備えた布の開発は、今回が初めてとなる。


●カーボンナノチューブのコーティング
 開発チームは、カーボンナノチューブで薄くコーティングされたポリマー繊維を、生地の横糸として使用している。カーボンナノチューブは赤外線と相互作用し、温度調節を行うのだという。

 例えば、汗をかいて肌の温度が上がったり湿気を帯びたりすると、水を吸収するポリマー繊維が変形し布地に小さな孔ができる。ここから熱を逃すため、冷却効果が得られるのである。

 また寒いときには、繊維同士が膨張し空間を閉じるため熱が逃れるのを防ぐ効果がある。

 つまり、人体から放射される熱と布地が「相互作用」することで機能しているのである。研究者の一人は、ラジオを聴くために周波数とアンテナを調節するのと似ている、と説明する。

●市場に参入するのは時期尚早
 これまでは、暑ければ脱ぎ寒ければ着ることが当然であった温度調節の世界に、革命を起こしそうな開発である。しかし、市場に参入するにはまだ解決しなくてはならない問題がいくつかあると研究者は語っている。

 とはいえ、生地のベースとなる繊維の入手は難しくはなく、カーボンナノチューブのコーティングも生地の染色プロセスにおいて容易であることから、新たに開発された布が販路にのるのはそう遠くない未来であるようだ。