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タイで日本の海産物に熱い視線が注がれている。昨年、バンコクにオープンした豊洲直送の魚市場が売り上げを伸ばし、すし店は急増。周辺国への販路拡大も期待されている。(バンコク=染田屋竜太)

午前8時過ぎ。バンコク中心部、スクンビット地域のトンローにある「日本市場」にトラック2台が着いた。「アワビ」「黒ムツ」などと書かれた発泡スチロールの箱が手押しカートで場内に運び込まれていく。

約700平方メートルの細長い市場には様々な魚が姿を見せる。「昨日、豊洲を出たピチピチの商品です」と、市場運営会社「J VALUE」の遠藤春雄社長(46)が笑顔で話す。

市場は2018年6月に開業した。運営会社には日本航空系商社のJALUXなどが出資した。日本の青果や精肉も並ぶ。海産物は豊洲から24時間以内に市場へ。まとまった量を空輸してコストを下げ、冷凍せず新鮮さを保つ。世界でもこの規模で日本の生鮮品が並ぶ市場は珍しい。

この市場は日本料理店の需要を狙い、日本人が多いスクンビットに立地を選んだ。ところが今、客の8割はタイ人だ。「日本料理店への業務用が大半と見込んだが、タイの個人客の多さに驚いた」と遠藤社長。1日の売り上げが半年で約2・5倍に伸び、200バーツ(約700円)で登録する会員は1万3千人。昨年末には豊洲からの仕入れを週3回から4回に増やした。

市場に来ていた会社経営者チャイレワットさん(35)は買い物かごいっぱいにマグロやウニ、カキを入れていた。「スーパーで買えない品がたくさんある。家で調理します」と話す。総額6千バーツ(約2万1千円)分買った。

日本貿易振興機構(JETRO)によると、タイが日本から輸入する農水産物の約4割が海産物だ。冷蔵マグロの切り身の輸入額は17年には約3億3千万円。12年から30倍以上に増えた。日本料理店は3千店を超え、中でもすし店は17年から18年にかけ1・8倍に増え454店。新鮮な海産物への需要は高い。

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