2019年2月22日 7時0分
日本農業新聞

 環太平洋連携協定(TPP)で日本が設けたバターや脱脂粉乳の低関税輸入枠を使い、異業種が輸入に参入していることが分かった。民間貿易のため参入しやすく、ゴルフ場会員権の売買が主な業務の会社など乳製品とは関係がなさそうな業者が触手を伸ばした。幅広い業種から関心を集め、発効2年目の2019年度分まで枠内のほとんどの数量を消化した。酪農関係者は、投機的な動きで市場が混乱する恐れもあると警戒する。(松本大輔)
投機目的 警戒も

 公認会計士・税理士事務所、印刷会社、建設会社──。TPP枠でバターや脱脂粉乳を求めた業者・個人の中には、乳業メーカーや商社だけでなく、異業種の名前も並んだ。ゴルフ場会員権取引業者は「頼まれて申請した。詳細は分からない」と明かす。

 バターや脱脂粉乳は生乳需給の調整弁。そのため国家貿易が輸入量の大部分を占める。国が輸入を管理し、直近の輸入実績などで一定の条件を満たした乳業メーカーや商社に売り渡す仕組みだ。一方、TPP枠は民間貿易。農水省に申請すれば誰でも参入できる。TPP発効以前も民間貿易の仕組みはあったが、高い関税をかけるなど無秩序な輸入を防いでいた。

 TPP枠はバターと脱脂粉乳合わせて最大7万トン(生乳換算)。徐々に枠内の数量は増え、関税は削減される。枠を上回る申請があった場合は抽選となり、申請を受け付けた後に残量があれば再び申請を募る仕組みだ。

 発効1年目の18年度の枠は協定上、6万トン。ただ年度途中の昨年12月発効のため、実際は2万トンとなる。同省によると同年度の枠はバター97%、脱脂粉乳100%を消化した。19年度の枠は6万2000トン。初回申請時点でバター94%、脱脂粉乳99%を満たした。幅広い業者の関心が集まり、すぐに枠のほとんどを消化する人気ぶりだ。異業種の参入に同省は「ふたを開けてみて、びっくりした」(牛乳乳製品課)と受け止める。「TPPでは、こうした参入を制限するために新たな条件を設けてはならないと定められている」(同)という。

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