2019年3月1日 15時27分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190301/k10011832901000.html

■イギリス“から”の離脱
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EUとの協調を訴える人たちが、最近、ロンドンの議会前で掲げているプラカードです。

「離脱によって出ていくのは、彼らだ」

そこには日産、ホンダ、トヨタの名前。さらにエアバスの飛行機が飛び立つ様子も描かれています。イギリスから製造業が去ってしまうという危機感が一段と高まったのは、先月19日のホンダの発表でした。

■期待は打ち砕かれた
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ホンダ 八郷隆弘社長

ホンダは、イギリスでの自動車の生産を2021年中に終える、と発表したのです。

イギリス南部スウィンドンにある工場で、ホンダは、年間15万台の乗用車を生産してきました。地域経済を支え、3500人を雇用している工場の閉鎖は、地元に大きなショックを与えました。

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ホンダのスウィンドンにある工場

発表の直後、私はスウィンドンの中心部を取材しました。ここは、3年前の国民投票で、離脱を求める意見が多数を占めたところです。しかし、市民からは「仕事を求めてここに来た人たちが、今度は去ることになる。将来、ゴーストタウンになってしまう」という声が聞かれ、誰もが地域の将来への不安を隠しませんでした。

衝撃はイギリス全体に広がりました。ホンダは世界的な生産体制の見直しの一環だと説明したものの、離脱交渉がうまくいっていないことと無関係なはずがないと、受け止められたからです。

議会下院では、離脱交渉を前に進められずにいるメイ首相に対し、最大野党の党首が「このままでは製造業が逃げてしまう」と迫りました。

イギリスのメディアは「EU離脱後も製造業はイギリスに残るという期待が打ち砕かれた」と伝えました。

■イギリス最大の工場でも
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日産のサンダーランドにある工場

このおよそ2週間前、日産自動車が明らかにした決定でも、イギリスは大きく混乱しました。

それは北部サンダーランドにある工場で予定していた新型モデル生産計画の撤回でした。この工場は年間44万台を生産し、イギリス最大の自動車工場です。

日産はディーゼル車への規制強化が理由だとしましたが、イギリス政府は、新型モデル生産を条件に、およそ90億円の支援が決まっていたという非公開情報をみずから明らかにし、日産をけん制しました。

離脱を控える中で、経済への打撃をこれ以上拡大させたくないという焦りが見えました。

■数字にも見え始めた離脱の打撃

実はこのところ、離脱による経済への影響が次々と数字になって明らかになっています。

去年の自動車の生産台数は、前年より9.1%減少しました。ことし1月では、減少幅は18.2%に拡大しています。さらに、自動車産業全体の投資額は、前年に比べて46.5%落ち込み、およそ半分となりました。

離脱後のイギリス経済の姿が見えない中で、企業は新規投資を見合わせ、消費者は車の買い控えを強めている影響が、はっきり現れたのです。

イギリスの自動車産業は、国内で年間150万台の車を生産し、直接雇用だけでも17万人が働いています。その低迷は経済成長の足かせとなり、去年のGDP=国内総生産の伸び率は1.4%と、6年ぶりの低い水準にとどまりました。

※以下省略