毎日新聞 2019年3月5日 12時30分(最終更新 3月5日 12時31分
https://mainichi.jp/articles/20190305/k00/00m/040/127000c

 京都市上京区のベンチャー企業「BugMo(バグモ)」が、コオロギの粉末を1本に約50匹分練り込んだプロテインバー
「バグモクリケットバー」(1本500円、200キロカロリー)を開発した。
牛や豚に比べ少量の飼料で育ち、たんぱく質やオメガ3脂肪酸、ビタミンなど栄養素も豊富で「環境にも人にも優しい」とPRしている。

 味はチョコレートと抹茶の2種類で、レーズンなどのドライフルーツやナッツ類も加えた。
京都・大阪両府や兵庫県などのスポーツジム、スーパーに卸すほか、インターネットでの注文で月計約1000本を出荷している。

 開発のきっかけは共同代表の西本楓さん(21)と松居佑典さん(32)が目にした海外の食料事情や環境問題だ。
西本さんは大学2年の時、ウガンダで食育指導ボランティアに参加し、月1度しか肉を食べられず栄養失調になる子供たちに出会った。
松居さんは仕事で訪れたカンボジアで畜産飼料の耕作のため熱帯雨林が伐採されている現状を知った。

 共通の知人を介して知り合った2人は2017年12月、省資源のたんぱく源として養殖昆虫を使った商品開発に着手。
まずは、魚釣りのエサなどに使われるミールワームでクッキーを試作したが「ものすごくまずかった」。
ハエやタガメなど数種でも試したが、苦みが少なく通年で飼育できるコオロギが最適と判断した。

 タイ北部の提携農家が育てた食用コオロギを使用しているが、数年以内に国内産に移行する予定。
昆虫特有の苦みを抑えるため、米ぬかや菜種油の搾りかすを与え、加工直前には絶食させて体内のふんを抜くという。

 サンプル用のコオロギを約4万匹飼育している滋賀県内の工場では、給餌の自動化など養殖システムの開発を進めている。
松居さんは「世界のどこでも同品質のコオロギを育てられるシステムを作り、将来は食料不足に悩む国に活用してもらいたい」と話す。

 会社名は英語で虫を意味する「Bug」に日本語の「も」をつけ「虫も食べてほしい」との願いを込めた。
西本さんは「昆虫食の文化はもともと世界各地にある。現代に合うよう再構築したい」と話す。問い合わせは同社へ電子メールで。

 昆虫食に詳しい松井欣也・東大阪大短期大学部准教授(給食管理)の話 
国内で昆虫を粉末にして売り出している企業は珍しい。
昆虫の姿が見えないので受け入れられやすく、今後の商品拡大も期待できる。
昆虫食は少量で栄養に富み、炭水化物に偏りがちな災害時の非常食に加えると有効だ。活用が広がる足がかりになればいい。

◇ プロテインバーを紹介する松居佑典さん(写真左)と西本楓さん=京都市上京区の西陣産業創造会館で
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