利用人数 把握難しく ラブホテル悩む対応

 ビジネスホテルや旅館などの宿泊客の多くは県外からだが、
業態によっては市民が宿泊税を払う場合もある。カップルが利用する
ラブホテルだ。金沢市内の経営者たちは宿泊税がかからないよう
料金体系を見直すなど対策を立てるが、利用人数の把握の難しさなど、
業界特有の悩みも抱える。

 「課税されないよう料金体系を変えるくらいしか対策はない」。
五十代の男性経営者は、五種類あった料金体系を一月から九種類に
細分化した。宿泊税の対象となる「契約上宿泊としての取り扱い」を
回避するため、宿泊以外に五時間以内の深夜休憩を設けた。

 「日をまたぐ六時間以上の利用」という条件を逆手に取る方策も。
午前零時一分から午前中いっぱい利用できる「フリータイム」を、
午前零時前に入室する宿泊と同じ値段で設定した。
「一部屋五、六千円に対し、二人分の宿泊税四百円は大きい。
お客さんの目線に立って対応しなければ」と客の確保に工夫を凝らす。

 プライバシーに配慮する事情から、宿泊人数を正確に把握できるのか
という不安も根強い。市内のラブホテルでは従業員と客が対面せずに
済むよう、フロント精算ではなく個室内に自動精算機を導入し、
人数に関係なく部屋代を請求するケースが多い。料金計算するシステムも
宿泊税に対応させる必要がある。ホテルごとに料金体系は異なり、
システム開発業者が変更の準備を急いでいる段階だ。

 一般的には二人の一部屋利用で、二人分の課税を想定している。ただ、
客によっては二人の入退室が別々になる場合や、観光客が
一般ホテル代わりに一人で利用することもある。一律に二人分を
請求すれば過大徴収の恐れも出てくる。

 別の四十代男性経営者は「監視カメラは設置しているが、主に車の
ナンバーと人の出入りを把握するのが目的。他の業態のように、
フロントで台帳に氏名と住所を書いてもらうわけでもない」と語り、
「税金をあいまいな形で徴収してもいいのか」と悩む。

 観光振興を中心にした宿泊税の使い道に対し、ラブホテル側には
いまだに否定的な見方が強い。「そもそも観光目的でない地元客が
大半のラブホテルで、なぜ宿泊税の支払い義務が生じるのか」。
疑問は晴れないまま、四月一日を迎える。


中日新聞(この連載は本安幸則、堀井聡子が担当しました)
(2019年3月9日)
https://www.chunichi.co.jp/article/ishikawa/20190309/CK2019030902000020.html

各個室に設置された自動精算機。宿泊税に対応したシステム変更や
実際の利用客数の把握などが課題となっている=金沢市内で
https://www.chunichi.co.jp/article/ishikawa/20190309/images/PK2019030802100334_size0.jpg