東日本大震災と原発事故8年 全国で今も5万人以上が避難生活
NHK 2019年3月11日 4時28分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190311/k10011842891000.html

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から11日で8年です。被災地では住宅の再建がおおむね進む一方で、依然として全国で5万人以上が避難生活を余儀なくされ、人口減少や高齢者の孤立なども課題となっています。

8年前の平成23年3月11日午後2時46分ごろ、東北沖でマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、東北や関東の沿岸に高さ10mを超える津波が押し寄せました。

●犠牲者2万2131人(震災関連死含む)

警察庁のまとめによりますと、今月8日現在で死亡が確認された人は合わせて1万5897人、行方不明者は合わせて2533人となっています。

復興庁によりますと、長引く避難生活による体調の悪化などで亡くなったいわゆる「震災関連死」と認定された人は去年9月末までに3701人で、震災による犠牲者は「震災関連死」を含めて少なくとも合わせて2万2131人となっています。

●進む住宅再建

住宅の再建はおおむね進み、ことし1月末までに、自宅を失った人などが入る「災害公営住宅」は計画の98.4%にあたる2万9212戸が完成し、高台への移転や地盤のかさ上げ工事で完成した宅地は合わせて1万7227戸と計画の94.5%に達しています。

●残る課題 今も5万人が避難余儀なくされる

一方、課題も多く残ります。

福島県では立ち入りが厳しく制限されている「帰還困難区域」が7の市町村にあり、住民の帰還の見通しが立っていないほか、岩手県と宮城県の一部の地域では、土地のかさ上げなどの土地区画整理事業が遅れています。

避難を余儀なくされている人は復興庁の先月時点のまとめで全国で5万1778人に上り、震災直後のおよそ47万人から徐々に減少しているものの、避難生活はかつてないほど長期化しています。

また、国勢調査を基にした自治体のデータを使いNHKが震災前の平成23年3月1日から先月1日までの人口の増減をまとめたところ、岩手、宮城、福島の35の自治体のうち、震災前と比べて10%以上人口が減った自治体は20と半数以上に上り、人口減少に歯止めがかかっていません。

●残る課題 増える孤独死

NHKの調査で、岩手、宮城、福島の災害公営住宅で誰にもみとられずに「孤独死」した人は高齢者を中心に去年1年間で76人と、前の年より4割増えたことが分かり、高齢者の孤立も課題となっています。

●残る課題 原発内の堆積物どう取り出す

3基の原子炉でメルトダウンが起きるという世界最悪レベルの事故が発生した福島第一原発では先月、「燃料デブリ」とみられる堆積物に初めて触れることができ、廃炉最大の難関とされるデブリの取り出しに向け、調査や検討が進められています。

燃料デブリは溶け落ちた核燃料が構造物と混じり合ったもので、福島第一原発2号機では先月初めて、格納容器の底でデブリとみられる堆積物に直接触れる調査が行われました。

調査では小石状の堆積物を持ち上げることができましたが、粘土状に見えた堆積物は硬く、動かすことができませんでした。

来年度は2号機だけでなく、1号機でも少量の堆積物をサンプルとして取り出すなどの内部調査が行われる予定で、国と東京電力は調査結果を踏まえて、来年度中にどの号機からどんな方法でデブリを取り出すかを決め、2021年から取り出しを始める計画です。

●残る課題 出続ける汚染水

福島第一原発1号機から3号機で溶け落ちた核燃料を冷やすために原子炉に注がれた水が建屋の地下にたまり、そこに山側からの地下水が流れ込むなどして汚染水が発生し続けています。

対策として、地下水をくみ上げたり、周辺の地盤を凍らせて氷の壁で囲み地下水の流入を抑える「凍土壁」を建設したりして、汚染水の発生量は減っています。
しかし、原発の敷地内のタンクに保管されている汚染水を処理したあとの水は112万トン、タンクの数は948基に上っています。

この水の処分について原子力規制委員会は、国の基準以下に薄めて海に放出する方法が合理的だとしていますが、去年8月、福島県などで開かれた公聴会では地元の漁業者などから「風評被害」を理由に海に放出するなどの処分に反対する意見が相次ぎ、最終的な処分方法は決まっていません。