2019.03.13
【発表のポイント】
胃酸発電でエネルギーを獲得する錠剤サイズの「飲む体温計」を開発し,動物適用実験にてコンセプトの実証に成功しました。
本センサは,有害なボタン電池を用いていないので,高い安全性を実現できます。また,小さいので,滞留なく体外に排出されることが期待できます。
真の基礎体温(安静時の深部体温)や体内時計を日常的に測定,管理することにより,病気の早期発見や健康増進につながることが期待されます。

【詳細な説明】
睡眠中の基礎体温,深部体温やそのリズム(体内時計)は,健康状態を把握するための重要な指標の 1 つと考えられています。例えば,うつ病患者は,睡眠時の深部体温が,健康な人と比較して高いことが報告されています。また,深部体温リズムは体内時計の指標の 1 つであり,これが睡眠覚醒リズムや社会的時間とずれると,睡眠障害や様々な疾病リスクを上昇させることが報告されています。これらを日常的にモニタリングできれば,病気の早期診断や健康増進につなげることができます。

一般的な体温計ではこれらを正確に測定することは容易ではありません。例えば,体表温度計は,環境温度や皮膚との接触状態によって測定誤差が生じてしまいます。センサを貼りつけ続けなければならないという煩わしさもあります。温度センサを肛門に挿して直腸温を測定する方法は,正確かつ比較的容易に深部体温を測定できます。しかし,センサ挿入時に誤って腸壁を傷つける恐れもありますし,これを日常的に行うことは困難です。

そこで,研究グループは,胃酸発電でエネルギーを獲得する「飲む体温計」を開発しました。今回,試作した錠剤型センサの外形寸法は,直径が約 9mm,厚み約

7mm です(図 1)。胃酸電池の電極となる Mg(マグネシウム)と Pt(プラチナ)金属板以外は樹脂に覆われており,樹脂内部には,温度センサ,マイコン,カスタム集積回路,通信用コイル,積層セラミックコンデンサーなどが実装されています。センサが飲み込まれ,胃酸電池電極部に胃酸が接触すると,レモン電池と同様の原理で発電し,センサが胃を通過する前に,発電エネルギーで昇圧回路を動かし,高い電圧でコンデンサーに充電してしまいます。

全文
https://research-er.jp/articles/view/78062
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