な事情があったとも認められない。
ところが,A巡査部長は,原告が本件かばんの
検査を拒否し,本件駐車場から退出しようとした原告の挙動をもって,所持禁制品
の所持を疑い,本件職務質問を開始し,原告に対し,本件所持品検査への協力を求
め,上記認定事実の経緯で本件所持品検査を行ったものである。本件所持品検査の
うち,本件かばんの検査については,原告は,A巡査部長らに対して「見せません。
」,「協力しません。」と明確にこれを拒否する態度を示していたというのである
から,所持品検査が職務質問の効果を上げるうえで必要性,有効性の認められる行
為としてこれに付随して許容されるに過ぎないものであることに鑑み,前記のとお
り,原告について,罪を犯し,又は犯そうとしていることを疑わせる具体的な事情
もない中で,原告の承諾が得られない以上,その段階で原告に対する所持品検査を
終えて原告を解放すべきであったというべきである。それにもかかわらず,A巡査
部長らは,原告に対して執拗に本件かばんの検査協力を求めただけでなく,これに
協力する義務はないと考えた原告が,原告車両に乗車して発車しようとしたところ
を,A巡査部長において,原告車両のドアが閉まらないように足を置き,更に,応
援要請を受けて臨場したD巡査部長及びE巡査長において,本件パトカーAを原告
車両の前方に停めて原告が本件駐車場から退出するのを阻止し,また,A巡査部長
だけでなくD巡査部長ら数名の警察官で原告に本件パトカーAに乗って話をするよ
う執拗に説得し,これに応じざるを得なくなった原告が本件パトカーAに乗車する
や,警察官3名が原告を囲むようにして本件パトカーAに乗り込み,本件かばんの
検査協力を求め,最終的に,原告がこれに応じて本件かばんの中及び本件玩具をA
巡査部長に確認させたというのである。