0001記憶たどり。 ★
2019/03/20(水) 14:12:35.66ID:np16SGO99平成の始めのころ、その筆箱を持っているとクラスのヒーローになれた。
マグネットタイプのカバーをパカっと開き、並んでいるボタンを押すと鉛筆や鉛筆削りがピョンっと飛び出す。
カバーの絵柄は角度を変えるとキラキラと変わる。授業中もついボタンを押して先生に怒られたり、
休み時間に機能を自慢し合ったり。だが平成が終わる今、主流は無地などシンプルなものに。
この30年に何が変わったのか。メーカー担当者に開発の裏側をたずねると、それぞれの時代が浮かび上がってきた。
1910年創業の老舗文房具メーカー「クツワ」(本社:大阪市)。商品開発部長の橡尾洋介さん(62)は入社以来、
筆箱の開発に携わる。入社当時は、定規入れや消しゴム入れなどが飛び出す筆箱は「多機能型」「ガジェット(仕掛け)型」
の全盛期だった。ふたのデザインは、人気のレーシングカーやアニメのキャラクター。合体ロボが大人気だった時代には、
消しゴムや鉛筆を入れる部分が外せ、カチャカチャと自由に場所を変えられる筆箱が登場した。さらに両面開き、
消しゴム入れつき3面タイプ…と「各社が開発競争に明け暮れ、新商品を出すたびにどんどんふたの数が増えていき、
最終的には6面ぐらいになった」。ダイヤル式の鍵付きのものは、授業中に番号を忘れて開けられなくなった子もいたという。
ルービックキューブが流行したときには、パーツが複数あり、映画「トランスフォーマー」のようにいろんな形に変えられるものも。
家電で両面開きの冷蔵庫が登場したときには、筆箱も両面開きを開発し、商品名は「どっちからでもスイッチヒッター」。
2階建てになるものや、ダイヤルを回すと飛び出る部分が変わるものまで。開発者ですら「もはや、何が何だか分からない」
という迷走ぶりだった。それでも「何それ、と眉をひそめるのではなく、面白いと思ってもらえる時代だったのでしょう」と振り返る。
だが、バブル崩壊と時を同じくして、ガジェット型は急速に衰退した。「低学年では、ただでさえ集中力を持たせるのが大変なのに、
先生の話も聞かず、筆箱で夢中で遊んでいる子が多かった」と、ある小学校教諭。学力低下や学級崩壊などの懸念もあり、
ガジェット型を禁止する学校が広がり、保護者も支持した。さらに「ここ4〜5年で、アニメやゲームのキャラクターものも禁止−
という学校が増えた」と橡尾さん。「筆箱は原則無地」としている神戸市教育員会によると、「斬新なデザインの筆箱だとどうしても
気が散ってしまうし、購入できる家庭とそうでない家庭との差も生じる。筆箱本来の役割に立ち戻り、授業に集中できる環境を整えるため」
という。クツワでも、最盛期は9割に上ったキャラクターものは5割程度に減り、あっても同色の浮き彫りなど目立ちにくい商品に。
ランドセルと同じ素材で6年間使えるシンプルなものや、軽くコンパクトなもの、左利き用に鉛筆入れと消しゴム入れの場所が
変えられるものなど、機能性・実用性を重視するようになった。
ただ、無地が主流になる中、展開が増えているのが「色」や細かな装飾だ。色は女の子の主流のパステルカラーのほか、
キャメルやモスグリーンなど、ランドセルや制服とのコーディネートで選ぶ人も多い。橡尾さんは「大人っぽいデザインや色など、
親御さんの好みの影響も大きくなった。昔のような男の子=青か黒、女の子=赤かピンク、という型にはまった色分けもなくなり、
ボーダレス化していると感じますね」と話す。
来る時代、次に登場するのは、どんな筆箱なのだろう。
時代を映す小学生向け筆箱=いずれも大阪府東大阪市、クツワ営業本社
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