三重県鈴鹿市で3月中旬、女性が保護していた猫1匹が連れ去られる事件があった。防犯カメラには、男が猫の首にひもを巻き、引きずっていく様子などが映っていた。猫や犬の虐待は増える傾向にあり、ここでも警戒していたさなかの出来事だった。以前から何度も足を運び、保護猫たちの姿を撮影してきた記者が改めて現場を訪ねた。【中部写真グループ・山口政宣】

 猫が連れ去られてから1週間がたった24日午前、数匹の猫が、暖かい日差しの下でのんびり遊んでいた。仲間がいなくなったことに気づかないように。

 この場所で定期的に撮影を始めて数年になる。自分が知っている猫スポットの一つだ。交流のあるアマチュアカメラマンを連れて撮影会を開き、その作品を展示したこともある。

 現場となった鈴鹿市内のこの建物は、猫も人も自由に出入りできる。通行量の多い道路からはかなり距離があり、日中でも訪れる人は少ない。たまに猫好きがのぞきに来るぐらいだ。世話をしている女性のおかげで、多くの猫たちは人なつこい。写真の腕を磨くにはもってこいの被写体で、レンズの前で愛くるしいさまざまな姿を見せてくれた。

 防犯カメラには3月8日と16日に不審な男が映っていた。別人とみられる。猫が寝床にしていた発泡スチロールの箱が壊される被害が昨年10月ごろから相次いだため、女性が建物に取り付け、定期的にチェックしていたという。

 8日夜の映像には、懐中電灯を手にした男が、足元に近づいてきた猫を蹴り上げる様子が映っていた。

 そして16日午後3時すぎ、餌を手にしたジャンパー姿の男が猫をおびき寄せ、首にひもをかけて連れ去っていった。かかった時間は1分にも満たない。かなり手慣れているように見える。ひもをきつく締めたらしく、猫が苦しんで跳びはねる様子も映っていた。

 猫の名前は「はと」で、生後半年ほどの雄。生まれて間もなく、この建物に捨てられていた。女性が黄色の首輪を付けて可愛がっていた。今年2月、訪ねた際に遊び回っている様子をカメラに収めてあった。

 女性によると、当日午後2時ごろから、白い袋を手にした人物が、建物の周りをうろついていたという目撃情報があるという。また同時刻ごろから1時間ほど、親子連れが猫をじゃらして遊んでいる様子も防犯カメラに映っていた。男は、人けが無くなるのを待ち、わずかな時間で連れ去ったとみられる。女性が見回りに来たのはその数分後だった。

 女性からの届けを受けた三重県警鈴鹿署が、事実関係を調べている。女性も、男の姿を載せたチラシを作り、情報提供を呼びかけている。女性は「これまでも猫が急にいなくなることはあった。でも、どこか別の場所で暮らしているのだろうと思っていた。それがこのような映像が残ったことに強いショックを受けた」と話している。女性の相談に乗ったNPO法人「グリーンNet」の武藤安子さんによると、周辺では猫が行方不明になるケースが続いているといい「早く解決してほしい。猫が狙われていると思うと、心配でたまらない」と話している。

3/29(金) 21:42配信 毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190329-00000094-mai-soci
連れ去られた「はと」。レンズの前でよく遊んでいた=三重県鈴鹿市で2019年2月27日、山口政宣撮影
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