オカシオコルテスはアメリカ史上最年少の女性下院議員(写真:AFP=時事)
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今、アメリカで大論争中の「現代貨幣理論(MMT)」をご存じだろうか。「財政は赤字が正常で黒字のほうが異常、むしろ、どんどん財政拡大すべき」という、これまでの常識を覆すような理論である。

この理論にアメリカ民主党29歳の新星で、将来の女性初大統領ともいわれているオカシオコルテス下院議員が支持を表明したことで、世論を喚起する大きな話題となっている。これに対しノーベル経済学賞受賞の経済学者クルーグマン、元財務長官のサマーズ、FRBのパウエル議長、著名投資家のバフェットらがこぞって批判。日銀の黒田総裁も否定的なコメントを出している。

はたして、この理論は、いったいどういうものなのか。著書『富国と強兵 地政経済学序説』で、「現代貨幣理論(MMT)」をいち早く日本に紹介した中野剛志氏が解説する。

■地動説や進化論も「異端」だった

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■クルーグマン、サマーズ、バフェット、黒田総裁の批判

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ここで、「現代貨幣理論」のポイントの一部をごく簡単に説明しよう(参考:スティーブン・へイル「解説:MMTとは何か」)。

 まず、政府は、「通貨」の単位(例えば、円、ドル、ポンドなど)を決めることができる。そして、政府(と中央銀行)は、その決められた単位の通貨を発行する権限を持つ。

 次に、政府は国民に対して、その通貨によって納税する義務を課す。すると、その通貨は、納税手段としての価値を持つので、取引や貯蓄の手段としても使われるようになる(紙切れにすぎないお札が、お金としての価値を持って使われるのは、そのためである)。

 さて、日本、アメリカ、イギリスのように、政府が通貨発行権を有する国は、自国通貨建てで発行した国債に関して、返済する意思がある限り、返済できなくなるということはない。

 例えば、日本は、GDP(国内総生産)比の政府債務残高がおよそ240%であり、先進国中「最悪」の水準にあるとされる。にもかかわらず、日本が財政破綻することはありえない。日本政府には通貨発行権があり、発行する国債はすべて自国通貨建てだからだ。

 政府債務残高の大きさを見て財政破綻を懸念する議論は、政府の債務を、家計や企業の債務のようにみなす初歩的な誤解に基づいている。

 政府は、家計や企業と違って、自国通貨を発行して債務を返済できるのだ。したがって、政府は、財源の制約なく、いくらでも支出できる。

 ただし、政府が支出を野放図に拡大すると、いずれ需要過剰(供給不足)となって、インフレが止まらなくなってしまう。

 このため、政府は、インフレがいきすぎないように、財政支出を抑制しなければならない。言い換えれば、高インフレではない限り、財政支出はいくらでも拡大できるということだ。

 つまり、政府の財政支出の制約となるのは、インフレ率なのである。

 ちなみに、日本は、高インフレどころか、長期にわたってデフレである。したがって、日本には、財政支出の制約はない。デフレを脱却するまで、いくらでも財政支出を拡大できるし、すべきなのだ。

■物価調整手段としての「課税」と「最後の雇い手」政策

 さて、国家財政に財源という制約がないということは、課税によって財源を確保する必要はないということを意味する。

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 だが、現代貨幣理論は、無税国家が可能だと主張しているわけではない。

 そもそも、現代貨幣理論の根幹にあるのは、通貨の価値は課税によって担保されているという議論だ。

 また、もし一切の課税を廃止すると、需要過剰になって、インフレが昂進してしまうであろう。そこで、高インフレを抑制するために、課税が必要となる。

 また、格差是正のための累進所得税、あるいは地球温暖化対策のための炭素税など、政策誘導のためにも課税は有効である。要するに、課税は、財源確保の手段ではなく、物価調整や資源再配分の手段なのである。

 さらに言えば、現代貨幣理論は、物価調整の手段として、課税以外にも、「就労保障プログラム」あるいは「最後の雇い手」と呼ばれる政策を提案している。これは、簡単に言えば、「公的部門が社会的に許容可能な最低賃金で、希望する労働者を雇用し、働く場を与える」という政策である。

(続きはソース)

3/26(火) 5:50配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190326-00271977-toyo-bus_all