さて、2019年度予算が成立した同じ日、環境大臣の諮問機関である中央環境審議会の地球環境部会カーボンプライシングの活用に関する小委員会の会合が開催され、地球温暖化防止に関する政策について議論した。

カーボンプライシングとは、炭素の価格付けのこと。温室効果ガス、とくに二酸化炭素(CO2)に価格をつけ、企業や消費者に対して排出量に応じた負担を求めることを通じて、CO2の排出削減を促す施策である。

カーボンプライシングには、政府による施策と民間企業の自発的な価格付けの2種類がある。民間企業の自発的な取組みは、企業が自主的に炭素に価格を設定し、投資などの判断の参考に用いるものである。政府による施策には、主に排出量取引と炭素税がある。

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そこで議論となっているのが、排出量取引と炭素税である。排出量取引と炭素税が、政府の会議で議論の俎上に載せられるのは、今に始まったことではない。ただ、消費増税を2度先送りした安倍内閣の下での社会保障改革の議論は、消費税を10%に引き上げることを催促しかねないため、事実上封印されていたのに対し、排出量取引と炭素税の議論は容認されていた。

炭素税は、二酸化炭素の排出量に対して課す税で、課税することでその排出削減を促す狙いがある。税率は、CO2排出量1トン当たりの金額で表示され、まさに炭素価格を意味する。日本では、地球温暖化対策のための税(温対税)が炭素税と分類される。温対税の税率は、CO21トン当たり289円で、税収は約2600億円である。わが国の税率は、主な炭素税導入国の中では低い水準にある。

こうした背景から、わが国の温室効果ガスの排出削減目標を達成するためには、温対税の現在の税率では温室効果ガスの排出抑制に対して不十分であり、温対税の大幅増税、あるいは炭素税の本格導入が選択肢として浮上してきた。

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炭素税は、産業界に根強い反対がある。地球温暖化防止は世界的な課題なのに、日本だけ高い炭素税を課せば、日本企業の国際競争力が低下して、日本での生産活動が萎縮したり海外に生産拠点が移りかねない。また、そもそもエネルギー多消費型産業では、炭素税が課されると他産業より多く税負担を強いられて当該産業の発展が妨げられることになる。

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