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トゥスクEU大統領「柔軟なブレグジット延長」を提案か

2019/04/05
欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)は、イギリスの欧州連合(EU)離脱について、12カ月間の「柔軟な」延期を提案するもようだ。情報筋が明らかにした。

それによると、この提案では、イギリスは議会が離脱協定を批准した段階でEUを離脱できる。10日に行われるブレグジット(イギリスのEU離脱)について欧州理事会の緊急首脳会議で協議される見込みだ。

テリーザ・メイ首相はこれに先駆け、トゥスク氏にEU基本条約(リスボン条約)50条に基づく離脱交渉期間の延長を求める書簡を送るとみられている。

イギリスは現在、4月12日にEUを離脱することになっているが、離脱条件をまとめた協定が承認されなければ、合意のないまま離脱することになる。
メイ首相は「できるだけ短い」追加の延長をEUに求めるため、最大野党・労働党と新しい離脱計画をまとめる協議を進めている。

首相官邸は、4日に行われた与野党の「実務」協議は「生産的」だったと述べた。協議は5日も行われる見通し。
労働党のジェレミー・コービン党首は協議の内容について、関税協定、単一市場との連携、内部審査、協定に対する法的根拠の必要性、協定の是非を国民に問う「確認のための」国民投票などが含まれたと労働党議員に説明した。
ジョフリー・コックス法務長官はBBCの取材に対し、与野党の協議が決裂した場合、延長期間は「長くなる可能性が高い」と話した。

一方EU首脳の間では、イギリスがさらなる延期を求めた場合にそれを認めるか、認めるならどのようにすべきか、意見が分かれているという。


<分析>カティヤ・アドラー欧州編集長

欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は、解決策を見つけたと思っただろう。しかしこれは簡単に言える話ではない。
トゥスク氏が言うところの「フレクステンション(flexible『柔軟な』とextention『延長』を合わせた造語)」とは、イギリスに1年間のブレグジット延長を認めつつ、議会が離脱協定を批准した段階でそれを打ち切るというものだ。

トゥスク氏は、これがイギリスにもEUにも合っている施策だと考えている。あるEU高官が私に話してくれたところによると、これによってEUはもしかしたら、数週間ごとにイギリスの「絶え間ない」短期間の延長要請に応える必要がなくなるという。

EU各国の首脳は10日の会談で、トゥスク氏の提案を協議する。決定には全加盟国の合意が必要だ。
一方ドイツの与党・キリスト教民主同盟(CDU)のアンネグレート・クランプ=カレンバウアー幹事長は、他にもEUができることがあると示唆した。イギリス議会で議論の的となった、北アイルランドとアイルランドの国境をめぐる「バックストップ」条項を見直してみてはどうかというものだ。

EUの公式なブレグジット方針からは程遠いものの、EU政界の閉ざされた扉の向こうでどんな会話が交わされているのか、垣間見えたようだ。
(英語記事 EU's Tusk 'suggests flexible Brexit delay')