JR福知山線脱線14年、消えぬ「定時運行」のこだわり
2019.4.25 21:23産経WEST
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 発生から14年を迎えたJR福知山線脱線事故。当時は、過密なダイヤ編成による定時運行を重視する風潮が問題視されたが、いまだに各社とも定時運行に対するこだわりは強く、乗客も求める傾向が高い。同事故以降、より安全性が求められる一方で、運行時刻の正確さは世界でもトップクラスといわれる日本。なぜ「定刻」にこだわるのか。

 「日本の鉄道は、発車時刻が正確。スタッフの意識も軍隊のようで、マニュアル通りという印象です」

 こう語るのは在日歴18年のイタリア人語学教師、ルカ・ビアズィッツォさん(49)。同国の鉄道で遅延は珍しくなく、来日当初は定刻通りに出発する日本の鉄道が奇異に映ったという。

 鉄道技術に詳しい工学院大の曽根悟特任教授によると、日本の発車時刻の正確さは先進諸国の中でもトップクラスを誇る。
「大都市圏は利用客が多く、少しでも遅れると乗客を運びきれなくなるから正確にならざるを得ない。そうした文化が全国的に根付いた」と曽根特任教授。交通政策に詳しい関西大の安部誠治教授は「日本人の几帳面(きちょうめん)で勤勉な性質の表れ」とも話す。


 福知山線脱線事故は、車両が制限速度を大きく超えてカーブに進入したことで起きた。列車は直前に停車した駅でオーバーランをし、定刻から1分余り遅れていた。乗務員がミスを気にして運転から気がそれたことが事故原因の一つとされる。事故後、余裕のないダイヤ編成が焦りを招いたとの批判を受け、JR西日本は事故後のダイヤ改正でゆとりを持たせた。

 だが、教訓とした「安全最優先」という意識は、薄れがちだ。平成29年12月にはJR西の新幹線のぞみで台車に亀裂が発生した問題が発覚。異常を感じながらも3時間以上運転を続けていた。JR西は「安全が確認できないときには迷わず停車させる」という意識の徹底に取り組んでいる。

 乗客側も、電車が数分遅れるだけで、いらだちを募らせる場面は少なくない。28年9月には、大阪府東大阪市の近鉄東花園駅で、人身事故の列車の遅延について苦情を言う乗客に対応中だった車掌が高架下へ飛び降りる騒動が起きている。

 安部教授は「鉄道が遅れるには遅れるなりの理由がある。安全はいかなる場合も最優先されるべきで、鉄道会社も乗客側も、それぞれが考える必要がある」と話している。(江森梓)


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