利用者をはじめ、金融業界の関係者を悩ませるているのが金融各社の「長すぎる社名」だ。

 金融自由化やバブル経済崩壊後に金融業界で起きた相次ぐ合併の結果、長い社名が増えた。中でも、特に記者泣かせの長い社名が損害保険大手、SOMPOホールディングス(HD)傘下の2社だ。だが、その長い社名がついに短縮されることが4月、発表された。記者だけでなく利用者にも朗報ともいえるこの社名変更。その背景には何があったのか−。

 ■以前から「長い」との指摘

 変更されるのは、傘下の損保事業を手がける「損害保険ジャパン日本興亜」で、この社名は令和2(2020)年4月に「損害保険ジャパン」となる。もう1社は、さらに長い社名の生命保険事業会社「損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険」で、令和元年10月に「SOMPOひまわり生命保険」に変更。社名はそれぞれ12文字から8文字へ、18文字から13文字へと短縮される。

 今回の社名変更の理由についてSOMPOHDの広報は「顧客などから社名が長すぎるとの指摘があり、短くすることにした」と明かす。実はこうした指摘は合併後間もない頃からあったとされ、「年末調整で保険料控除などの書類を書く際、『契約者から長い社名は書類の枠内に書ききれない』『手書きだと辛い』といった文句が多かった」(同社関係者)という。

 さらに、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険の社員からは「社名が長すぎて営業での説明が大変」「名刺に記入する社名が文字数が多くて小さくなる」など、社名短縮を求める声があった。

 ちなみに、このタイミングで変更に至ったのは、「現在の社名になった合併からちょうど5年という節目を迎え、組織としての一体感や顧客への認知も広がったことも踏まえ決めた」と説明。改元や2020年東京五輪を意識したものではないとした。

 ■消える「日本興亜」の文字

 ただし、今回の変更によってこの2社の名称から「日本興亜」の文字が消えることになる。

 社名の歴史をたどれば、現在の損害保険ジャパン日本興亜は、平成26年9月に損保ジャパンと日本興亜損害保険が合併したことで誕生した名称だ。その際は、まったく新しい社名への変更も検討されたというが、すでに消費者に認知されている両社の名前を活用した方が業務上の利便性が高いことなどを考慮し、両社の旧名を残した経緯がある。

 とはいえ、日本興亜の名称は13年4月に日本火災海上と興亜火災海上が合併して誕生しており、両社の旧名を引き継いだ歴史的意味を含む。日本興亜出身の社員にとっては思い入れのある名称でもあり、失われることに批判や反対がわき起こる懸念もあった。

 そのため、正式に社名変更を発表する数週間前から、社内だけでなく全国の主要代理店などから変更に対する意見を聞き、反応を確認した。中には「日本興亜の名前がなくなるのは寂しい」という感想もあったが、その中の多くは「会社が次のステージに進む変更なら賛成」という“前向き”なものだったという。幹部も含め大きな異論はなく、4月1日に正式に社名変更が了承された。

 ■「SOMPO」は使えず

 関係者によると、以前から顧客を中心に名称の長さが指摘されており、「お客さまの視点で考えるべきだ」との観点から、約2年前から役員会などの場で該当2社の名称変更に向けた議論があったとされる。

 新名称の候補としては、海外子会社にも利用され、語感もシンプルな「SOMPO」の文字を入れることも検討されたようだ。

 しかし、金融庁が定める保険業法によると、保険会社は社名に生保会社、損保会社であることを示す文字を使用しなければならない決まりがある。文字として規定されているのは、「生命保険」「火災保険」「海上保険」「傷害保険」「自動車保険」「再保険」「損害保険」で、保険を生業とする事業会社はこれらの文字のいずれかを社名に入れないとならないのだ。

全文
http://news.livedoor.com/lite/article_detail/16385788/