昭和は第二次世界大戦や高度成長、オイルショック、バブル経済を経験した「激動」の時代だった。平成は人口こそほとんど変わっていないが、平成初期に先進国で最高水準だった貯蓄率が大きく落ちるなど「激変」の時代だったといえる。令和は人工知能(AI)などによる第4次産業革命で変化している世界との競争にさらされる「激震」の時代になるだろう。

 平成に経験した大きな変化に、日本はある程度、対応してきた。たとえば平成初期に約1千だった法律は約2200まで増えた。この中には、個人情報保護、コンプライアンス(法令順守)といった新しい考え方も反映されている。
 だが、(周波数帯の利用権を競争入札にかける)「電波オークション」導入や外国人労働者の受け入れ、働き方改革のほか、米IT大手のようなプラットフォーマー育成に向けた競争政策など、「やらなければならないこと」もたまってきた。
 政治上タブーでタッチできなかったことにしっかり向き合い、規制改革を進めて対応しなければ、米国のレンタルビデオチェーン大手のブロックバスターが、映像配信大手ネットフリックスの台頭で倒産に追い込まれたような事態に見舞われるだろう。
 第4次産業革命に絡み、新しい取り組みを行える環境作りが必要だ。ただ、イノベーション(技術革新)は「創造的破壊」であり「自己否定」でもあるため、抵抗する人たちが出てきて強い政治的パワーを持つ。抵抗を突破できず改革に時間がかかれば、日本は(国際競争で)決定的に遅れてしまうだろう。

 日本が巻き返すための「橋頭堡(きょうとうほ)」は(4月17日の国家戦略特区諮問会議で制度概要が決まった)「スーパーシティ」だ。第4次産業革命の取り組みなどを(町ぐるみで)実現する構想で、令和の最初に作り、取り組むことが必要だ。
 国民の意識を変えられるのは政治のリーダーだが、政治的なリスクを必ず負う。未来を良くする政策は安倍晋三政権のレガシー(遺産)にもなるだろう。(談)

 たけなか・へいぞう 一橋大卒。米ハーバード大客員准教授、慶大教授などを経て平成13年、小泉純一郎内閣で経済財政担当相に就任後、金融担当相、総務相などを歴任。28年4月から東洋大教授。博士(経済学)。68歳。和歌山県出身。

ソース
https://www.sankei.com/economy/amp/190503/ecn1905030011-a.html