2019年5月8日 5時46分
イラン政府は、アメリカのトランプ政権が核合意から離脱したことへの対抗措置として、8日にも核合意で制限してきた核開発を一部再開することを発表する方針で、さらなる緊張が懸念されています。

アメリカのトランプ政権は去年5月、イランと欧米などが結んだ核合意からの離脱を表明して経済制裁を段階的に発動し、今月にはイラン産原油の輸出を全面的に禁止する措置をとりました。

さらに5日には、アメリカ政府はイランの動きをけん制する目的で、原子力空母を中東地域に派遣すると発表し、両国間の対立が激しくなっています。

こうした中、イランの国営通信などは7日、アメリカが核合意から離脱して1年を向かえる8日にも、アメリカに対する対抗措置を発表すると伝えました。

詳細は明らかにされていませんが、「核合意への関与を弱める」としていて、合意で制限されてきた核開発の一部を再開する方針だと伝えています。

そして、ロウハニ大統領がこうした対抗措置について、核合意に参加しているフランスやドイツなど5か国に書簡で通告し、さらに国営放送を通じて発表する見通しだとしています。

イランではアメリカの経済制裁によって外国企業の撤退が進み、経済の悪化が続いていて、国益が守られなければ核開発の再開も辞さないとして繰り返し警告してきました。

国営通信は「イランは核合意にはとどまる予定だ」と伝えていますが、イランが核開発を再開すればアメリカだけでなく、合意を守るように求めてきたヨーロッパの国なども反発するものとみられ、さらなる緊張が懸念されています。

イラン核合意とは
イランの核開発問題をめぐっては、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国の関係6か国とイランは、長年の交渉の結果、2015年7月、イランが核開発を大幅に制限する見返りにアメリカやEU=ヨーロッパ連合などが科していた経済制裁を解除することで最終合意しました。

合意ではイラン側はウラン濃縮に使われる遠心分離機を合意後10年間にわたって、1万9000基から3分の1以下にあたる6100基に減らすほか、ウラン濃縮度は15年間にわたって平和利用に限られる3.67%までに抑えられることが義務づけられました。

また、西部アラクにある重水炉については、核兵器に転用可能な兵器級のプルトニウムを抽出できないようにするため、設計を変更することなどが求められています。

全文
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190508/k10011908211000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_001