◆ バチカンで開講されたエクソシスト養成講座。今年は他教派も参加OKとなり内部から反発の声も。

昨年に引き続き、今年もバチカンで悪魔祓い師(エクソシスト)の訓練コースが開講された。
5月6日〜11日のことだ。

これが意味するところは、世界的に悪魔が跳梁跋扈する情勢はいまだ改善されていないということである。
原因として挙げられているのも、「タロットなどオカルトへの興味と安易な実践」そして「インターネットとSNSによる伝播力」と、特に変化はない。

だが、原因の追究と解析はともかく、対策については、バチカンは今年また新たな一歩を踏み出した。
訓練コースにカトリック以外の教派の聖職者も参加し、共に対応法を協議したのである。

■他教派に開かれた今年のエクソシスト養成コース

「異なる教派が一堂に会してエクソシズムの経験について比較するのは今回が初めてです。
これはお互いに助け合うためで、その意思があるなら、(エクソシズムの)実践に、より磨きをかけることができるでしょう」

こう語るのは、会議の共催者の一人、ペドロ・バラホン・ムーニョス神父だ。

「映画の『エクソシスト』や『ザ・ライト』に描かれるように、カトリック教会はエクソシズムと最も関係があります。
ですが、エクソシズムを行う唯一の教会なのではありません。悪魔の追放は、キリスト教会の起源、その最も初期まで遡ることができるのです」

そして今回、カトリックの他に、プロテスタントからルター派とペンテコステ派、東方教会からはギリシャ正教会の代表が、エクソシズムに関して協議するために集まったのだ。
 
■コースで扱う内容は幅広い

さて、このコースを他教派に対して開く目的の一つは、エクソシズムの実戦経験に焦点を当て、悪魔を追い払う方法のスタンダードを見つけ出すことにある。
ムーニョス神父は、他教派の中には「より創造的で、既存の形式に則っていない」方法があるという。

コースの中で、エクソシストたちは本当に悪魔に憑かれている場合を認知するための訓練を受ける。
といっても、それは聖水をかけたり、十字架を振りかざすといった「絵になる」構図からはかけ離れている。

訓練で取り扱われる分野は幅広い。
神学、典礼学、教会法といったキリスト教的な事柄から、人類学や現象学、また、医学、神経科学、薬理学など、果ては犯罪学や法学上の内容までが含まれる。

■カトリックは内部からの反発を乗り越えられるのか

また、予想されていたことではあるが、コースを他教派に対して開くことについては論争もあった。
イタリアの引退した大司教、ルイージ・ネグリ氏は、ルター派について「カトリックの文化の副産物」と呼び、「カトリック教会を社会から抹殺しようという卑しい試みを表象している」と述べた。

ムーニョス神父はこの発言に対して、「(コースが開かれた)大学としても、私個人としても、このような神学的見地に与することはできない」と明言している。
ちなみに、カトリックの教会法には、エクソシストは「敬虔で、知識を持ち、思慮分別があり、清廉にして高潔な生を生きる」司祭であるべし、と書かれているそうだ。

エキュメニズム(超教派主義)の方向へ新たな一歩を踏み出したカトリック教会だが、次の一歩を踏み出すことはできるだろうか。
来年以降にも期待したい。

カラパイア 2019年05月17日
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