神経難病「パーキンソン病」で、患者の脳に蓄積するたんぱく質の合成を抑制する物質を開発したと、大阪大などのチームが21日、発表した。パーキンソン病を発症するマウスに投与すると、症状が表れにくくなったという。今後、創薬に向け、サルなどの実験を通じて安全性を確かめる。論文が同日、英電子科学誌に掲載された。

 パーキンソン病は手の震えや体のこわ張りなどの症状を示す。国内では10万人に100〜150人が発症し、60歳以上では10万人に1000人と高率となる。

 患者の脳内では、たんぱく質「α―シヌクレイン」が異常な構造になって蓄積し、神経がダメージを受けている。情報を伝える脳内物質「ドーパミン」の減少を補う対症療法はあったが、根治や予防ができる薬はなかった。

 研究チームは、α―シヌクレイン合成の途中段階で作られる伝令RNA(mRNA)に結合し、分解を促す物質(核酸)を作製した。マウスの実験で、α―シヌクレインの量を4〜5割程度抑制できたという。

 一部の遺伝性のパーキンソン病患者では、α―シヌクレインが健康な人の1.5倍程度に増えることが知られ、今回開発した物質は事前の投与で発症を防げる可能性がある。非遺伝性の患者の脳内でも同様の状況が想定され、効果が期待できるという。

 阪大の望月秀樹教授は「脳神経が大きくダメージを受けてからの投与では遅い可能性がある。パーキンソン病になるリスクの高い人や、発症早期の人に使うことが想定される」と話している。



毎日新聞 2019年5月21日 18時00分
https://mainichi.jp/articles/20190521/k00/00m/040/152000c