昭和から平成、令和に移ろうとも、いまだに暴走族のように爆音を鳴り響かせて走るバイクを見かけることが少なくない。国土交通省は、毎年6月を「不正改造車を排除する運動」の強化月間としており、取締を強化しているものの、未だ撲滅には至っていない。どうして、違法マフラーはなかなかなくならないのか。バイクジャーナリストの呉尾律波(くれおりっぱ)氏に聞いた。
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“ブォンブォン”と、鼓膜が破れるほどの爆音で走り去っていくバイクに、一瞬心臓が止まる思いをしたことはないだろうか。

 違法改造車があれだけの大きな音を出す原因について、呉尾氏は次のように解説する。

「自動車やバイクに取り付けられているマフラーは、エンジンから排ガスが発生する際に出る音を減らすと同時に、エンジンの特性を調整するための装置です。マフラー自体は自動車やバイクの走行に必要ですが、マフラーの中にある消音器と呼ばれる装置を外すと、排気の際の抵抗が少なくなるのでスピードが出るようになり、同時に音も大きくなってしまうのです」

 法務省が作成した「犯罪白書」(平成30年版)によれば、暴走族の構成員数は、ピーク時だった1982年の4万2510人から、2017年は5051人と、8分の1以下に減少している。

 暴走族が絶滅危惧種と化す中で、いったいどんな人がマフラーを改造しているのだろうか。

「マフラーを改造する人の気持ちというのは、さまざまだと思いますが、都会の場合は単に爆音を出して目立ちたいという人でしょうし、地方の場合はもっとスピードを出したいという人でしょう。また、若い人は大きな音に関心を持ちますが、年配の方は音の“味”にこだわりがある傾向があると思います」

 スピードや排気音量の大きさにこだわるライダーがいる限り、迷惑千万な違法マフラーの爆音はなくならない。というのも、マフラーの改造は規制の範囲内であれば合法的にできるからだ。

「バイクの場合、社外品であっても『全国二輪車用品連合会』(JMCA)が認定したマフラーが付いていれば問題になりません。それ以外に認定を受けていない騒音のひどいマフラーもありますが、『レース用』という名目であれば販売すること自体は違法ではないのです。マフラーの構造自体はそれほど難しいものではなく、個人でも改造できますし、色々なメーカーが車種別に多くのリプレイスマフラーを販売しています」

 次項では、さらに深くマフラーの法整備について掘り下げていこう。


■違法マフラーがなくならないのは政治問題
 現在、どういう基準で排気音量は規制されているのだろうか。

「バイクの騒音は、1970年以前までは何も規制されていませんでしたが、それ以降は規制されるようになりました。2010年からは、原付で84デシベル、原付2種で90デシベル、その他で94デシベルまでに規制されています。犬の鳴き声が90デシベル、電車が通るときのガード下の音が100デシベルなので、その中間の音量です。さらに2016年からは車種別に規制値が定められるようになりました」

 しかし、騒音を聞く方にとっては車種なんて関係なく、音量を基準にして取り締まってもらいたいものだ。どうしてこのような不可解な規制になったのだろうか……。

「一説によれば、選挙カーを考慮してとの噂があります。バイクや自動車の騒音を一律で規制してしまうと、“選挙カーの騒音もバイクと同様にもっと取り締まれ!”という声も出てくる。そのため基準値を意図的に分かりにくくしているのではないか、というわけです」

 規制があやふやなら、当然ながらそれを取り締まる警察も、十分な成果を出すことはできない。

「騒音規制が車種別になったことで問題なのは、規制基準が多様化したことで現場での取り締まりが対応できないのではないかとういことです。バイクの車種なんてたくさんありますから、よほどのマニアでなければ、どれがどれだか分かりません。そもそも警察の場合は、騒音を測定する装置をあまり持っていないという話もありますからね」

 目視で判別できるほど車種に詳しく、騒音のレベルを耳で正確に測定できるような警察官など、はたしてどれほどいるのだろうか。(以下ソースで)

ソース デイリー新潮
https://news.nifty.com/article/domestic/society/12280-279686/