北信濃の初夏の味覚、ネマガリダケの時季が近づく中、県警などが、入山者に携帯電話を持って入るよう呼び掛けている。携帯があれば遭難者の位置特定などに役立つが、県警によると県内では昨年、ネマガリダケ採りに入って遭難した7件10人のうち、4件5人は持たずに入山していた。6月1日に入山解禁となる上高井郡高山村の山林を管理する村公・共有林管理協議会は、やぶの中で携帯が水にぬれるのを嫌がる向きもあるとみて、今季は入山者にジッパー付きの袋を配布する。

 ネマガリダケ採りは、ササが生い茂るやぶに入るため、奥に進むと方向感覚を見失って道に迷いやすく、毎年遭難する人が絶えない。須坂署によると、管内で2014?18年に起きたネマガリダケ採りに伴う遭難は11件12人で、全て高山村内で発生。18年が3件4人で最も多く、15年と17年には各1人が死亡した。

 県警山岳安全対策課によると、入山者が遭難しても携帯電話から110番通報があれば、衛星利用測位システム(GPS)で通報者の位置を特定でき、遭難者へ指示も出せる。そのため入山者には充電した携帯を持って山に入るよう呼び掛けるほか、限られた電池を有効に使うため「遭難した場合、家族に連絡するより先にまず110番通報してほしい」とする。

 ただ、携帯を持っていても入山時に自宅や車などに置いたまま遭難する人は依然いる。ネマガリダケ採りは朝露でぬれたササのやぶを進むことも多く、高山村公・共有林管理協議会は「入山者が携帯がぬれて故障することを恐れる点も、持って入らない一因ではないか」と推測。今季はタケノコ狩りの人が入山時に同協議会に協力金を納める場所で、密閉できる携帯用の袋を単独での入山者を中心に配ることにした。

 須高地区山岳遭難防止対策協会の副隊長、豊田昇一さん(54)=高山村=は、入山者が山林内で携帯を落とすことを心配して車などに置いたままにしている可能性も指摘。「遭難は命に関わる。必ず持って山に入ってほしい」と訴えている。


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携帯電話を入れる袋。高山村公・共有林管理協議会が6月1日の入山解禁以降、単独で入山する人らに配布する


信濃毎日新聞 5月27日
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