別府の全2300泉源調査へ 温度低下の傾向受け 市と大分県

 温泉の湧出量、泉源数で日本一を誇る大分県別府市は県とともに早ければ
6月から、市内の全泉源調査に乗り出す。温度の低下など「衰退傾向」が
見られることから、2年かけて約2300カ所の現状や変化を調べ、資源保護の
方法や持続可能な温泉の利活用法を探る。市内すべての源泉を調べるのは初めて。

 市によると、「衰退傾向」は2016年、鶴見・伽藍(がらん)岳に近い
約100カ所で実施した調査で判明した。約30年前の調査と突き合わせた結果、
比較可能な40泉源のうち約7割で熱量が低下。蒸気・熱水温度などが下がり、
より深く掘削しないと同じ温度が保てない状況が確認された。

 1960年代の高度成長期に年間100本前後の新規掘削が10年程度続くなど、
急激に温泉開発が進んだことなどが背景にあるとみられる。

 また近年、市内では温泉熱を利用した温泉発電が急速に拡大。因果関係は
不明だが、今年1−2月に人気施設「地獄蒸し工房鉄輪」で、食材を蒸す蒸気の
温度が上がらず、臨時休業に追い込まれており、関係者から調査を求める声が
上がっていた。

 県が各泉源の情報をまとめて掲載している温泉台帳によると、市内の泉源は
2292カ所(17年3月時点)。うち市所有は182カ所で、他はほとんどが民間。
所有者不明や、現在使われておらず位置がはっきりしない泉源もあるという。

 調査項目は、利用状況や温度、湧出量、成分など十数項目。得られたデータは
過去のデータや温泉台帳などと比較しながら現状を把握し、基礎データにする。
計約1億4千万円の事業費は県と市で折半する。

 市温泉課は「市の宝を後世に引き継ぐため、有効な対策を講じたい」としている。


西日本新聞 社会面 (2019/5/28 6:00)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/513705/