唾液を送るだけで世界中の“自分と血縁関係のある人”がわかる、そうしたサービスが、いま世界的な人気になっています。アメリカなどでは、生みの親との再会などさまざまな出会いも生まれています。実は日本でもこの検査を受ける人が増えています。“自分の知らなかった家族や親戚”とつながったとき、人は何を感じるのでしょうか?

世界に広がる“検査”
「コロンビアに遠い従兄弟が」
「親戚が174人見つかった」
SNSで偶然見つけた複数の書き込みが目にとまりました。

どうして突然、海外に親戚が見つかるのか。調べてみると、皆、ある検査を受けていたことがわかりました。それが“遺伝子検査”です。

アメリカの複数の会社が提供しているこのサービス、検査方法は唾液を専用の容器に入れて検査会社に送るだけ。およそ1か月後には、ネット上で結果を見ることができます。

今のところ日本国内ではサービスが提供されていないため、希望する人は、検査キットを現地で購入するか、インターネットの輸入代行会社から入手して行います。

利用者は世界中で急増していて、アメリカの専門誌「MIT Technology Review」の試算によると、ことし1月時点で2600万人を超えたといいます。

ハワイに親戚が!?
実際に検査を受けた人を取材しました。大学の研究者、山岡潤一さん(31)です。

去年の夏、研究で訪れたアメリカで、体質やパーキンソン病などの病気のリスクなどを調べようと、軽い気持ちで検査を受けたといいます。

しかし、目に止まったのは、別の項目でした。

それが、「DNA親戚」。検査を受けた人たちの中で、遺伝子の配列に共通する部分がある人どうしを「同じ先祖を持つ」と見なして、教えてくれます。世界中になんと306人のDNA親戚がいるというのです。

中でも“最も近い親戚”と表示されたのが、ハワイに住むクリスタル・イシカワという女性でした。
「クリスタル・イシカワさんっていう人は、全然存じ上げなくて。“誰?”って感じでしたね」(山岡さん)
本当に親戚なのか?両親に尋ねてみると、母親から意外な返答がありました。

「昔ひいおばあさんの姉がハワイに渡った。その子孫ではないか」と言うのです。名前は「石川タツ」。名字が一致していました。

DNA親戚どうし連絡をとることもできます。山岡さんは、テレビ電話で直接話してみることにしました。
クリスタルさんは25歳。ハワイの航空会社で働いていると言います。日本との関わりを尋ねると、本当にタツさんのひ孫だったことがわかりました。
「びっくりですよね。話せてよかった。ここでつながってるってことがわかって」

ことしの正月、福岡の実家に帰省した山岡さんは、眠っていた古いアルバムの中にタツさんの写真を見つけました。戸籍をたどると、タツさんが明治27年生まれで、11人兄弟の長女だったこともわかりました。

なぜタツさんはハワイに渡ったのか。気になった山岡さんは、幼いころタツさんに会ったことがあるという親戚を訪ねました。

「なぜ向こうに行ったの?」(山岡さん)
「“口減らし”よ。兄弟が多かったから、『自分は家族の犠牲になってハワイに行った』って」(親戚のおばさん)

大正時代、人口増加による食料難などから、ハワイに移民した多くの日本人の1人だったのです。苦労の末、新天地で家庭を持ち、生活を築いていったタツさん。貧しい日本の家族に物資を送り、生活を支えてくれたといいます。

山岡さんは、家族の長い歴史の上に今の自分があることに、初めて気付きました。
「ハワイに移住していったというタツさんとかがいて、その延長で自分がいるっていう。自分がどうやってここに生まれているのかっていうのが、わかってくる気がしますね」

この2か月後、山岡さんは、日本に旅行に来たクリスタル・イシカワさんと初めて会い、一緒に食事をしました。2人は、今後も交流を続けることを約束したといいます。



※長いので続きはソースで

NHK 2019年5月31日 17時53分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190531/k10011935361000.html?utm_int=news_contents_tokushu_002