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真っ暗な街、骨と皮だけの人 裏切られた石油大国のいま
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岡田玄
2019年6月3日11時0分

 5月24日午後7時半、南米ベネズエラの北西部マラカイボ。車で走行した中心部の目抜き通りは、街灯も信号もともらず、周りの建物も真っ暗。まるで照明のないトンネルの中を走っている感じだ。

 マラカイボは石油産業の拠点として栄え、200万人以上が暮らすベネズエラ第2の都市だ。だが、この日は早朝から停電が続いていた。明かりのともった雑貨屋を見つけると、屋外で自家発電機が動いていた。

 世界最大の原油埋蔵量があるベネズエラは、かつて南米屈指の豊かさを誇った。だが、石油価格の下落と国家運営の失敗で経済が破綻(はたん)し、庶民が食料、医薬品、燃料を入手できない人道危機に陥っている。

 苦境に追い打ちをかけるように、今年3月、全土で数日間にわたって停電になった。約3カ月たった今も全面復旧には至らず、マラカイボのように各地で断続的に停電が続く。マラカイボでは水道も止まった。水道施設が電力を確保できないのが原因とみられる。

 5月25日午後6時すぎ、マラカイボ中心部のガソリンスタンドに5キロを超す行列ができていた。商店を営むネストル・ポルティジョさん(54)は並び始めて36時間が過ぎていた。「ガソリンの次は水くみ。その次は食べ物探し。生きるために仕事どころじゃない。ここは見捨てられた街だ!」

 この状況は、特に貧困層の人々を追い詰めている。
 同日午後、マラカイボ北部のス…
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