福岡市早良区百道の市道交差点付近で4日夜に起きた車6台が絡む多重衝突事故で、交差点に突っ込んだワゴン車を運転していた高齢男性が、周囲に運転免許証の返納を相談していたことが判明した。ワゴン車はアクセルを踏み続けたまま次々と対向車や右折待ちの車に衝突しており、福岡県警は亡くなったワゴン車の男性が交差点に進入する時点で既に意識を失っていた可能性もあるとみて、事故原因を調べている。

 事故では、ワゴン車を運転していた同区原3、小島吉正さん(81)が出血性ショックで、同乗していた妻節子さん(76)が胸部の外傷で亡くなった。他に搬送された14〜52歳の男女計7人のうち35歳の歩行者の男性が骨盤骨折などの重傷、6人は軽傷だった。

 捜査関係者によると、小島さんに既往症は確認されなかった。知人や近隣住民らによると、ほぼ毎朝近所のゴルフ練習場に通うなど、健康にも問題はなかったといい、妻の節子さんとともに近くのボウリング場に向かっている途中に今回の事故を起こしたとみられる。

 一方で、小島さんは80歳になった頃から運転免許証の返納を検討していた。知人の黒岩宣征(のぶゆき)さん(77)によると、東京・池袋で車が暴走し母子2人が亡くなった4月の事故など、高齢ドライバーによる事故が話題になる度に「いつかは返納した方がいいんだろうな」と話し、数日前にも口にしていたという。

 事故は4日午後7時5分ごろに発生。県警が周囲の車のドライブレコーダーなどを解析したところ、ワゴン車は交差点から約700メートル南で前の車に追突した後、対向車線に飛び出し逆走。対向車2台の側面などにぶつかった後、交差点で右折中の乗用車に追突した。弾みで乗用車は同じく右折中のワゴン車に衝突し、歩道に乗り上げる形で横転。小島さんのワゴン車も歩道に乗り上げ歩行者の男性をはねた。

 捜査関係者によると、ワゴン車は最初の事故の後、アクセル全開で加速し、ブレーキを踏んだ形跡もなかった。小島さんが交差点に進入する時点で意識を失っていた可能性もあり、アクセルとブレーキの踏み間違いなども含め、慎重に原因を調べる。【中里顕、浅野孝仁、一宮俊介、柿崎誠】

毎日新聞2019年6月6日 07時00分(最終更新 6月6日 07時00分)
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