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2019/06/07(金) 18:15:06.30ID:obQaWk/T9https://cdn.mainichi.jp/vol1/2019/06/06/20190606k0000m040346000p/8.jpg
なぜ貴重な文化財をひそかに切り取ったのか。岩手県立博物館(盛岡市)の赤沼英男上席専門学芸員(61)による文化財無断切り取り問題で、被害に遭った自治体の担当者や鉄に詳しい専門家は「文化財を長持ちさせるための分析に必要だった」とする赤沼氏の説明を疑い、個人の研究目的だったという見方を強めている。
◇依頼は「保存処理」分析は含まず
同県軽米(かるまい)町は2011〜13年度、大開(おおびらき)遺跡(縄文・平安時代)など3遺跡の文化財を同館に預けた。サビなどによる劣化を防いで長持ちさせるための「保存処理」を依頼し、切り取りなどを含む「分析」は頼まなかった。毎日新聞は預かった文化財を同館が整理した写真付き個票の内部資料を入手。そこには同町が預けた文化財約20点も含まれていた。
5月下旬、毎日新聞は同町の担当者とともに個票を確認した。担当者が注目したのは大開遺跡の鉄製のおの。刃の先端と断面の2カ所に切り取りを意味する「サンプル」という文字と、切除する部分を示したW形のマークが書かれていた。
担当者は「同じおのの中でも形状が違う2カ所から切り取ったのは、(鉄の研究に重要な)鋼(はがね)がそれぞれ入っているかどうか、成分を確認したかったのではないか。狙いは分かる」と指摘。赤沼氏が研究目的で切り取ったと推測した。
毎日新聞は今月4日、同じ個票を赤沼氏に示して、こうした切り取り方をした理由を聞いた。赤沼氏は「どういうふうに作られたかを(研究目的で)調べるために、最もふさわしい箇所から摘出する手法に確かに似ている」と認めつつも「取った資料のその後の扱いは(研究目的とは)全く異なる」とあくまで保存処理のために必要な分析だと強調した。
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赤沼氏を巡っては、同県野田村の平清水(ひらしみず)遺跡の文化財の一部を切り取った跡を分からないようにするため、通常使う樹脂に鉄のかけらなどを加えて加工していたことが同館への取材などで新たに判明。さらに同館が文化財を紛失し、赤沼氏が無断でレプリカを作製して同村に返そうとしていたことも分かった。問題は14年に発覚していた。切り取りや紛失を隠そうとしたとみられている。【小鍜冶孝志、藤井朋子】
◇近年は行われなくなった「破壊分析」の可能性も
所有者に無断で文化財の一部を切り取った理由については、専門家からも赤沼英男上席専門学芸員の説明を疑問視する声が出ている。
赤沼氏は「文化財の保存処理のために分析する必要があった」と説明するが、金属の分析や保存科学に詳しい研究者の一人は「報道の写真を見る限りだが、鋼(はがね)の研究などに必要な、鉄の炭素含有量のデータを集める個人的な目的だったのでは」と推測する。
炭素の含有量は鉄の歴史研究では特に関心の高いテーマという。伝統的な製鉄の研究では、含有量が約0・3〜1・7%の鉄は鋼と呼ばれ、焼き入れをすることで硬い刃物になる。こうした刃物の出現時期や製法を知るためには、出土品の成分分析が不可欠だ。
この分析には3〜5グラムのサンプルが必要で、一部を糸ノコなどで切り取る際に今回発覚したケースと同じ幅1センチほどのM(W)形の切り跡が生じる。「破壊分析」と呼ばれるこの手法は1960年代ごろまで盛んだったが、近年はあまり行われていないという。
一方、鉄製の出土品の保存は塩化ナトリウムなど「塩(えん)」と総称される化合物を抜き取った上で、その跡にアクリル樹脂を浸し含ませることで行われる。破壊分析は必要ないという。
この専門家は「報道の写真を見ると、切り取った部分は鋼と考えられ、分析することでいつからこうした刃物ができたかが分かってくる。無断分析は論外だし結果を公表していないのも問題だ」と憤慨している。
また、別の研究者によると、赤沼氏は中国・明代の産業技術書「天工開物(てんこうかいぶつ)」にある伝統的な製法から鋼をつくる研究に熱心に取り組んでいた。この製法の有効性は学界でも賛否両論があるが、赤沼氏は東北では唯一の肯定的な研究者だったという。この研究者も無断切り取りについて「保存処理には必要ない。(自分の研究のための)分析データだと思う」と同様の見方をしている。【伊藤和史】
6/7(金) 6:00配信
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